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ソフトバンクへの懸念が高まったら、日本はどうなるか  (2/2ページ)

 ウィーカンパニーへの投資から損失が発生するなど、ソフトバンクの業績と財務内容の悪化を懸念する市場参加者は徐々に増えつつあるのも確かだ。言い換えれば、スタートアップ企業への投資などによって成長の実現を目指すソフトバンクのビジネスモデルをより慎重に評価しようとする見方も出はじめた。

 日本の金融市場に与えるマグニチュード

 これまで、ソフトバンクは投資や買収のために、積極的に借り入れを行ってきた。万が一、ウィーカンパニーをはじめとする投資先企業の成長やビジネスモデルへの懸念が高まれば、ソフトバンクの業績や財務内容にも影響があるだろう。

 その場合、ソフトバンクに融資を行ってきた国内の大手銀行などでも、業績懸念が高まる可能性がある。また、状況によっては国内の株式市場の不安定感も高まるかもしれない。ソフトバンクの投資戦略がわが国の金融市場に与えるマグニチュードは小さくはないだろう。

 懸念を払しょくするためにソフトバンクは、迅速かつ強力にウィーカンパニーへの支援を取りまとめ、実行に移した。ソフトバンクは金融支援に加え、米スプリント再建を指揮したマルセロ・クラウレ氏を会長に送り込み、ウィーカンパニーの経営体制の整備と成長の実現に向けて強いコミットメントを示している。

 それは、ソフトバンクの投資戦略が重要な局面を迎えつつあることを示唆している。これまで、ソフトバンクは、スタートアップ企業の創業者の個性を尊重してきた。しかし、今のところ、ウィーカンパニーに関しては同社の投資スタンスがワークしなかったようだ。

 同様のケースが増えれば、ソフトバンクの成長エンジンであるビジョン・ファンドの意義そのものが問われかねない。ソフトバンクは方針を修正して自ら投資先企業にヒトとカネを送り込んで経営に積極的に関与し、どん欲に成長を実現しようとしている。

 先行き不透明感と求められる経営姿勢

 徐々に、世界経済の先行き不透明感は高まっている。その中でソフトバンクは成果をあげ、市場参加者の信頼を得なければならない。

 すでに、中国経済は成長の限界を迎えた。世界経済の安定感を支えてきた米国経済でも企業の設備投資が鈍化している。米中貿易摩擦に関しては、休戦協定締結への期待は高まっている。同時に、米中の交渉がどう進むか、不透明な部分もある。スマートフォンなどを含む第4弾対中制裁関税の残りの部分が発動される可能性はゼロとはいえない。もし、制裁関税が発動されれば、世界経済には無視できないマイナスの影響があるだろう。

 先行き不透明感が高まる中、ソフトバンクに求められることは、成長を実現することだ。2020年1~3月にも、ソフトバンクが投資してきた中国の短尺動画のプラットフォーマーである“TikTok”を運営するバイトダンス(北京字節跳動科技)が香港でのIPOを検討していると報じられている。

 成長が期待できるスタートアップ企業をより多く見出し、投資、IPOを通して株価上昇という利得を手に入れることができれば、市場参加者はソフトバンクの成長戦略を評価するだろう。

 不安が顕在化する前にリスクを排除できるか

 そのために重要なことは、ソフトバンクの組織が創業者である孫氏の人を見抜く資質を手に入れ、高めることだ。その点において、優秀な人材の確保は急務だろう。また、企業家の価値観を含め、投資先のリスクを冷静に分析する体制も整えなければならない。口で言うほど容易なことではないが、そうした取り組みの蓄積がソフトバンクの持続的な成長を支えるだろう。

 現状、ソフトバンクの経営に対する懸念が大きく顕在化しているわけではない。6月末時点で同社は2.9兆円程度の現金及び現金同等物を保有し、アリババなどの株式の評価額は20兆円を超える。今すぐ同社の財務内容などが大きく悪化する可能性は抑えられているだろう。

 ただ、米国の景気が不安定になれば、投資先企業の成長への懸念も高まり、ソフトバンクの業績悪化につながる恐れがあることは冷静に考える必要がある。

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 真壁 昭夫(まかべ・あきお)

 法政大学大学院 教授

 1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。

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 (法政大学大学院 教授 真壁 昭夫)(PRESIDENT Online)

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