海外情勢

「全員ベトナム人」に衝撃 英コンテナ遺体 海外出稼ぎに規制も

 英当局が、ロンドン東方で大型トラックのコンテナから見つかった39人の遺体は全員がベトナム人だと発表し、ベトナム社会は衝撃を受けている。欧州での高収入を夢見て渡航した若者たちが巻き込まれた可能性がある。海外への出稼ぎを推進してきた政府は、不法入国を斡旋(あっせん)するブローカーの摘発など規制強化に乗り出した。

 事件は10月23日に発覚。英警察は当初、遺体は中国人とみられるとしていた。しかし、ベトナム中部のゲアン省やハティン省などの住民から「英国に向かった家族と連絡が取れなくなった。事件に巻き込まれた可能性がある」との届け出が相次ぎ、英側は今月1日、遺体はベトナム人だと改めて発表した。

 ベトナムは1986年の改革・開放路線「ドイモイ(刷新)」導入前から、貧困克服や失業者対策のために海外への労働者派遣を国策として進めてきた。政府によると、今年1~9月にベトナムから労働者として海外に渡航したのは約10万人。行き先は日本が半数超で1位、台湾が2位だったが、より良い待遇を求め、入国規制が厳しい欧州行きを選ぶ若者も多い。

 海外への出稼ぎが多いのは経済発展が遅れる中部だ。ゲアン省の場合、1人当たりの平均年収は約3000万ドン(約14万円)で首都ハノイや商都ホーチミンの半分以下。国際機関による2012~16年の統計では、海外への労働者渡航数は全58省、5政府直轄市のうちゲアン省が1位、ハティン省が3位だった。

 地元メディアなどによると、事件に巻き込まれた可能性があるハティン省の女性(26)は家族に「私の外国行きは失敗だった。死にそう。息ができない」と携帯電話でメッセージを送った後、連絡を絶った。

 女性は日本で約3年間働いた後、地元に戻り中国、フランスを経由して英国を目指したという。(ハノイ 共同)

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