【ロンドン=板東和正】12月12日の英総選挙をめぐり、英国の早期の欧州連合(EU)離脱を訴える新党「離脱党」のファラージ党首は11日、前回の総選挙で与党・保守党が勝利した選挙区で候補者を擁立しない方針を発表した。離脱党はこれまで全650選挙区で候補者を立てる方針を示したが、これを撤回。離脱派の票が分散されるリスクがなくなったことで、来年1月末までの離脱を訴えるジョンソン政権に有利になりそうだ。
離脱党は、5月の欧州議会選で英国の第1党となり離脱派の支持を集めている。保守党を率いるジョンソン首相より強硬な離脱方針を掲げる離脱党のファラージ氏は、英領北アイルランドの関税手続きは当面EUルールに従うとしたジョンソン氏の離脱協定案を「離脱ではない」と非難。協定案を撤回しなければ、総選挙で全議席を争う姿勢を強調していた。
しかし、ファラージ氏は11日の演説で、「(保守党が2017年の前回の総選挙で議席を獲得した)317選挙区で候補者を擁立しない」と発表し、これまでの方針を転換させた。
ファラージ氏は、「私は保守党に対して全く愛情を持っていない」とした上で、「(保守党の地盤で擁立しない)行動は2度目の国民投票を防ぐことになる」と方針を変更した理由を説明した。小選挙区制の選挙制度の下、離脱派の有権者の票が割れれば、離脱の是非を問う国民投票の再実施を公約に掲げる最大野党・労働党を利することになるとみられていた。
ファラージ氏はこの日、離脱に否定的な労働党などの議席を奪うことに集中する方針を改めて示した。「離脱問題は危機にひんしている」とも語り、ジョンソン氏への対抗姿勢を和らげることで、離脱実現を優先させたとみられる。英メディアによると、ジョンソン氏はファラージ氏の表明を歓迎しているという。
英調査会社ユーガブによると、8日時点の保守党の支持率は39%で、2位の労働党を13ポイント引き離している。