ジャカルタレター

ジョコ政権、新たな5年は前途多難

 10月20日、ジョコ・ウィドド政権2期目がスタートした。憲法の規定により、次の大統領選には出馬できないジョコ大統領は、政党のしがらみや支持率など気にすることなく、インドネシアの将来に必要な改革をすることができる絶好の5年となるはずである。

 経済成長加速が課題

 しかし、今回の大統領就任式は、5年前とは様子が違う。中心的な支持者からも不安の声が聞こえてくるほど、問題が山積しているからだ。日本で注目されるのは、インドネシア経済の先行きだろう。中国の影響力が増す中で、どのように経済成長を加速させるかが最大の課題である。しかし、経済成長には国内の治安安定は不可欠である。

 まず、先月から続く汚職撲滅委員会に関する改正法の撤回と、刑法改正を阻止すべく各地で起きたデモの行方は注目に値する。法案審議・採決が延期となった刑法改正は、与党も野党も改正に賛成しているため、変更なく可決されれば、学生たちを中心にまたデモなどが起きる可能性が高い。

 また、同10日にウィラント政治・法務・治安担当調整相が白昼、訪問先のバンテン州で、ナイフで腹部を刺された事件があった。犯行は、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)に忠誠を誓う組織によるテロとの見方が強く、シリアからの元IS戦闘員のインドネシア帰還が増える中、こうしたテロ事件の増加による治安悪化への懸念も大きい。

 最も解決が困難なのがパプア問題であろう。8月以降、パプア人への人種差別的発言があったとして抗議デモが起き、今も混乱拡大を防ぐためとしてインターネットやWi-Fi接続の規制が続いている。現代社会の必需品であるネットの利用規制には大いに批判が集まっているが、何よりもいまだ根強く残る人種差別的な見方、デモ隊や分離独立運動関係者に対する力によるアプローチ、外国人の立ち入り制限など、このままではさらなる対立と衝突が繰り返されるだけである。パプア問題には、根本的な対応の変化が求められている。

 民主化逆行の動きも

 最近では、公務員の中で政府批判を行った者は解雇されるという噂が出回っていることも大きな懸念材料であろう。実際、ある軍関係者の妻が、フェイスブックにウィラント調整相が刺された事件について、「ウィラント氏が行ってきた過去の人権侵害ケースと比べると刺されても当然であり、死ななかっただけましである」といったような書き込みをしたところ、夫が現役職から外されたという。

 妻の書いたコメントで夫が役職から外されたという事件から分かるのは、どれだけ政府が会員制交流サイト(SNS)を監視しているかということである。このような、強権的な政府へと向かう動き、そして民主化から逆行した動きが次々とみられる中で、イスラム・アイデンティティーの高揚と政治が相まっている現状も見逃せない。治安の安定が経済成長に不可欠なだけに、不安材料が多いといえる。これらを一つ一つ解決していかなければ、「2045年までに世界トップ5の経済大国を目指す」目標も達成は難しい。ジョコ大統領にとっては、前途多難な5年間となりそうだ。(笹川平和財団 堀場明子)

                   

 「ASEAN経済通信」 https://www.asean-economy.com/

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