株価・外為

「自社株買い」過去最高ペース 投資家の目を意識

 上場企業が自社の発行済み株式を買い戻す「自社株買い」の勢いが止まらない。SMBC日興証券の集計によると、令和元年度の自社株買いの設定金額は10月末時点で5・5兆円と前年同期の1・7倍のペース。企業統治改革が進み、投資家が企業のお金の使い方を厳しく問うようになったことが後押ししている。

 今年の自社株買いの傾向について、SMBC日興証券法人ソリューション室の石井厚室長は「同業他社の動きを見ながら、自社株買いを行う会社が増えてきている」と話す。11月に入っても自社株買い設定の勢いは衰えず、年度を通じて、同社集計で過去最高だった平成14年度の9・6兆円を上回る可能性もありそうだ。

 企業が積極的に自社株買いをする背景には、コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)やスチュワードシップ・コード(機関投資家の行動指針)の導入がある。投資家の目を意識して、株主還元や財務指標の改善の手段として、自社株買いを活用するケースが増えている。

 しかも、「同じ株主還元策である『増配』は一度実施すると元に戻しにくいのに対し、自社株買いは業績に合わせて調整が効く」(証券関係者)ため、企業に重宝がられている。

 ソニーは5月、2千億円を上限とする自社株買いを発表。3月に1千億円の自社株の買い付けを終えたばかりだった。

 株式持ち合いの解消進展も、自社株買いの加速に拍車をかけた。13社による株式一斉売却が明らかになったリクルートホールディングスは8月、800億円の自社株買いを発表。リクルート株を手放す側の大日本印刷は9月に600億円の自社株買いを発表した。

 法人企業統計によると、企業が蓄えた「内部留保」は平成30年度に463兆円を超え、7年連続で過去最高を更新。大和総研の太田珠美主任研究員は「資本効率向上への意識が高まる中、大規模な投資計画がない企業が自社株買いに動いている。この勢いは当面続くだろう」と話している。(米沢文)

 

 自社株買い 上場企業が発行済み株式を時価で買い戻すこと。株主還元策の一つ。買い戻した株を消却することで、1株当たりの資産価値や利益を高めることができる。買い戻した株を役員や従業員向けの株式報酬制度に活用したり、「金庫株」として保有し続けたりする場合もある。

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