国内

20年度税制改正 内部留保にメス 大企業の法人税軽減厳格化

 政府、与党は、大企業の法人税を軽減する税制上の優遇措置について、適用条件を厳しくする方針を固めた。

 国内の設備投資額に関する基準を引き上げ、投資に消極的な企業には実質的な増税となる。2020年度の税制改正作業では、M&A(企業の合併・買収)支援策が目玉の一つとなっており、企業への「圧力」も組み合わせて、活発な投資を引き出す。

 与党の税制調査会で協議し、20年度の与党税制改正大綱に反映させる。

 適用条件を厳しくするのは研究開発費に応じて税負担を軽くする「研究開発税制」など。優遇を受けるには、従業員の賃上げや国内への設備投資額で一定の条件を満たす必要がある。だが設備投資の基準は緩く、大半の企業がクリアできるため「骨抜き」(企業関係者)の状態だった。政府、与党は実効性を高めるため、設備投資額が減価償却費の1割超とされている基準を引き上げる。

 政府、与党が法人税優遇の適用条件を厳格化するのは、企業による内部留保の蓄積が「アベノミクスにとって最大の課題」(与党関係者)との問題意識があるからだ。ただ思い切った条件引き上げは難しいとみられており、制度上の「アメとムチ」で狙う効果の実効性には疑問符が付く。

 安倍政権の看板政策「アベノミクス」は、大規模な金融緩和と財政出動で円安株高の流れをつくり、企業の業績改善を通じて賃上げ、消費拡大という「経済の好循環」を実現する姿を描いていた。

 実際に輸出産業を中心に業績は改善し、財務省の法人企業統計によると、12年度に約48兆5000億円だった企業の経常利益は、18年度には過去最高の約83兆9000億円にまで拡大。しかし企業は経済の先行き不安から利益を活用することに消極的で、賃上げや投資拡大は伸び悩み、好循環は実現していない。

 その結果、内部留保は金融・保険業を除いた全産業で、12年度の約304兆5000億円から18年度の約463兆1000億円へと、5割以上膨らんだ。

 自民党の甘利明税制調査会長は「どうやって企業の内部留保を投資につなげるか(在任中に)道筋を付けたい」と意気込むが、企業は慎重姿勢を崩しておらず、実現は容易ではない。

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