第5世代(5G)移動通信システムの整備を後押しする減税措置の創設が、2020年度の税制改正で焦点の一つに浮上している。政府・与党内では「21世紀の基幹インフラ」として支援が検討される一方で、財源確保への懸念もあり意見は割れている。中国企業の製品を事実上排除する安全保障上の思惑も加わり、議論の着地点は見通せない。
5Gは携帯電話などに使われる通信方式の新しい規格で、通信の速度や容量を大幅に向上させたのが特長だ。大手通信会社が個人向け携帯サービスなどに利用するほか、地域の企業が建設現場で建機の遠隔操作などに使うため、限定された場所で展開する「ローカル5G」もある。
経済産業省などは5Gの整備で「日本の産業全体に経済効果がある」と主張。ローカル5Gの事業者や、計画より前倒しして対象設備を整備した通信大手を対象に、投資額の30%を法人税額から控除するよう求める。国が通信の安全性を確認した事業者を認定し優遇する制度とすることで、中国の華為技術(ファーウェイ)などを対象から事実上外す狙いもある。
これに対し、財務省は「(経産省などは)安全保障を持ち出せば減税が取れると思っている」(幹部)と反発。税収減は1000億円を超える可能性があり、代替財源の確保が難しいと指摘する。自民党税制調査会の内部にも、国の財政への影響を懸念する声が出ている。
5G支援に意欲を示す自民党の甘利明税制調査会長は26日夕、楽天の三木谷浩史会長兼社長と東京都内で面会し意見交換。27日に開いた自民党税調の幹部会合後に取材に応じ「5Gは新たな時代のインフラだ。利便性が高く安全なものにする責務がある」と強調した。
【用語解説】第5世代(5G)移動通信システム
携帯電話などに使われる通信方式の新規格。最高通信速度は現行の第4世代(4G)の約100倍となり、遅延も飛躍的に改善する。日本では2020年から携帯各社が順次本格導入する計画。携帯の個人利用に加え、あらゆる機器を通信でつなぐ「モノのインターネット(IoT)」など幅広い分野で活用が期待されている。