昨年公開の米映画「レディ・プレイヤー1」(スティーブン・スピルバーグ監督)で好演し注目を集めた俳優、歌手の森崎ウィンさん(29)はミャンマー出身だ。10歳で日本に移住。14歳で芸能界入りした後、祖国でも活躍の場を広げ、今や国民的アイドルに。「エンターテインメントを通じてミャンマーをPRしたい」。その目は世界を見据える。
女性の黄色い声援が飛ぶ中、ステージで熱唱する。投げたタオルをファンが奪い合う。CM出演が相次ぎ、バラエティー番組の司会も。ミャンマーでの人気は絶大だ。ファンの年齢層が広いのが特徴だ。カウン・ミャ・トゥ君(5)は「日本から来たんだよね。歌がうまいのが好き」。主婦、ヌー・セインさん(62)は「とても素朴で素直な感じ」と魅力を語る。少し幼さが残るビルマ語が新鮮に映るという。
森崎さんの両親は東京へ出稼ぎに行き、祖母に育てられていたが、弟が生まれたのを機に自身も日本に移り住んだ。気候に慣れず言葉も分からなかった。同級生はミャンマーの国名すら知らず、ショックだった。
いじめられたこともあった。休み時間にサッカーをすると決まってキーパーをやらされ、ゴールを許すと殴られた。一方、いじめを止める友達も現れ、次第になじんでいった。「自分を受け入れてくれた」と振り返る。
スカウトされて芸能界入りし、ダンス・ボーカルグループの中心メンバーに。日本で多くのドラマや映画に出演してきた。ミャンマーでは2017年に会員制交流サイト(SNS)で注目され始め、出演映画公開の記者会見での真摯(しんし)な対応が好感を集め、人気が沸騰した。「森崎」は芸名だ。
ミャンマーのテレビ局の番組制作に協力する日本国際放送のエグゼクティブ・プロデューサー、松島麻子さんは「負けず嫌いで努力家。だから味方が増える」と評する。スケジュールは既に来春まで埋まっているという。
ミャンマーは今も軍の影響力が色濃く残り、人権侵害を国際社会から非難されることもある。祖国への思いは強く、自分が世界的に活躍すれば、国民の活力になると分かっている。
日本への愛着はあるが、国籍を変えるつもりはない。「ミャンマー人だってハリウッド映画に出られる」。日本語、ビルマ語、英語を駆使し、祖国の対外的な「顔」の一人になる決意だ。(ヤンゴン 共同)