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LIBOR2021年廃止 国際金利の指標消失で銀行困惑 日銀が代替指標のパブコメ結果を公表

 不正操作問題を受け2021年末に廃止が見込まれる「ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)」に代わる新たな指標金利を決めるため、国内金融機関が検討を急いでいる。日本銀行は29日、代替指標候補について銀行などから意見公募した結果を公表した。幅広い金融取引で金利設定の基準となるLIBORの対象市場は世界で300兆ドル(約3京2千兆円)超にも上るとされる。準備が間に合わなければ大混乱になる恐れがあり、円滑な移行に向けた体制づくりが課題だ。

 「21年末までの2年強は決して長い期間ではない。相応に時間をかけた丁寧な準備が必要だ」

 日銀が立ち上げた検討委員会の議長を務める三菱UFJ銀行の松浦太郎経営企画部長は、こう訴えた。

 金融機関はさまざまな取引で、金利を「LIBOR+何%」などと定めている。LIBORが廃止になれば既存の契約にも影響が及ぶが、見直しでは貸し手と借り手の双方が納得できる代替指標を定める必要があり、合意には膨大な時間がかかりそうだ。

 日銀の検討委が示す代替指標候補は5種類。LIBORのように万能の指標はないため、候補は一つに絞らず契約形態に応じて選んでもらう方針だ。意見公募では、例えば貸し出しなら政策金利の見通しを織り込んだ「翌日物金利スワップ」が好まれるなどの傾向が出た。こうした事情も踏まえ、今後は指標の参考値公表や運営機関の公募など具体的作業に入る。

 一方、LIBORの廃止時期が刻一刻と近づいている中でも、国内では影響の見極めやシステム改修といった準備作業があまり進んでいない現状もある。

 メガバンクは移行に向けたプロジェクトチームを発足させ、全国銀行協会も今年9月に検討部会を設置した。しかし指標の選択次第で顧客が損をするなど問題が起きる恐れもあり、考慮すべき課題は多い。日銀の意見公募の過程でも、「一つに絞り込めないのか」と要望が出たという。

 海外では米国が連邦準備制度理事会(FRB)主導で「担保付き翌日物調達金利(SOFR)」を公表して、国際的な普及を図っている。対する国内では代替指標が決まるまで様子見をしている金融機関も多く、危機感が足りないとの指摘もある。「そろそろ本腰を入れないと間に合わない。来年度の最重要課題の一つになる」(大手銀関係者)と焦りの声も漏れている。(田辺裕晶)

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