論風

SDGsへの取り組み加速 経営戦略に統合し成果拡大を

 経団連企業行動・SDGs委員長 二宮雅也

 今年9月、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」採択後4年間の進捗(しんちょく)状況を首脳レベルでレビューする「SDGサミット」が開催された。サミットで採択された政治宣言『持続可能な開発に向けた行動と遂行の10年に向けた態勢強化』で国連加盟国は2030年までにSDGsを達成するために資金を動員し、国内での実施を拡充し、制度を強化することを約束した。併せて、すべてのレベル、あらゆるステークホルダー(利害関係者)による行動を加速する緊急の必要性を強調した。

 2.5兆ドルの資金不足

 これに先立って発表されたSDGsの進捗に関する国連事務総長報告書では、複数の目標では進展が見られたものの、最も貧しく脆弱な立場に置かれた人々と国が取り残されていること、気候変動や生物多様性は危機的状況にあることを指摘している。

 そのためエコシステム・レベルでの変革や取り組みの規模拡大を通じて、経済社会のトランスフォーメーションを加速化する必要があると訴えている。あわせて、30年までにSDGsを達成するためには、資金ギャップ(途上国だけで年間2.5兆ドル=約271兆7500億円)を埋める必要があるとしており、民間セクターによる資金提供、技術やイノベーションへの期待はますます高まっている。

 こうした中、経団連では、デジタル革新技術と人間の想像力と創造力を最大限活用することで実現する未来社会戦略「ソサエティー5.0」がSDGs達成に寄与するとの認識から「SDGs達成に向けたソサエティー5.0」の取り組みを推進している。その一環として17年には「企業行動憲章」と「その実行の手引き」を改定した。さらに、SDGs達成に資する会員企業のイノベーション事例集を発行したり、事例のデータベースを掲載した特設サイトを開設したりしている。またSDGsミッション派遣を通じた国連機関やさまざまなステークホルダーとの対話を通じて企業の自主的な取り組みを促進している。

 SDGsは、世界が直面している課題を人類の英知を結集して整理した世界共通言語である。企業にとってSDGsは中長期的な経営課題、すなわちビジネス機会と事業リスクを把握する上で役立つ羅針盤となる。SDGsの17目標はそれぞれ独立したものではなく不可分であり、経済成長、社会的包摂、環境保護という3つの主要素を調和させる必要がある。

 企業がSDGsの達成に貢献するには、その原則を踏まえつつ、経営戦略や中長期計画にSDGsを統合し、自社に最も合致する目標を選択して追求し、実効性を高める必要がある。そして、その取り組みの成果を公表し、さらなる資金を調達して規模や範囲を拡大することが求められている。

 東大、GPIFと連携

 そこで、経団連では、東京大学、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と連携して、ESG(環境・社会・企業統治)投資により、ソサエティー5.0推進企業の取り組みを後押しし、革新的・破壊的イノベーションと持続的な企業価値の向上を一層加速させ、SDGsの達成を迅速かつ確実なものにすることを目指して共同研究を行っている。この研究を通じて企業の「SDGs達成に向けたソサエティー5.0」に向けた取り組みを、ESG投資が金融面で後押ししていくような具体策を打ち出す予定である。

 SDGs採択5年目を迎える20年は次の5年、10年を見据えるための節目として重要な年である。17の目標レベルだけではなく、169のターゲット、230の指標レベルで具体的な進捗の開示が求められることから、レポーティングとインパクト評価がますます重要となる。

 企業としても、「誰ひとり取り残さない」持続可能で包摂的な社会の実現に向けて、SDGsへのアクションを加速化させていく必要がある。

【プロフィル】二宮雅也(ふたみや・まさや) 中央大法卒。1974年日本火災海上保険(現損害保険ジャパン日本興亜)入社。2011年日本興亜損害保険(同)社長、14年損保ジャパン日本興亜社長、16年会長。16年から経団連企業行動・CSR委員会委員長(現企業行動・SDGs委員会委員長)。67歳。兵庫県出身。

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