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リクナビの個人データ無断活用問題、業界は対策模索 実効性に課題

 就職情報サイト「リクナビ」が学生の内定辞退率を予測して企業に販売していた問題で、厚生労働省が13日、契約していたトヨタ自動車やりそな銀行など38社を行政指導したと発表した。企業や就職情報会社に対する学生らの不信感は根強いが、内定を勝ち取るにはサービスを使わざるを得ないジレンマも。政府や業界団体は対策を急ぐが拘束力には限界があり、試行錯誤が続く。

 「何かしらの個人情報は企業側に流れているんだろうなと思っていた」。慶応大3年の男性(20)は苦笑する。リクナビに限らず、無料で使えるサービスには「裏」があるように感じるという。夏季のインターンシップから徐々に就活が本格化。先輩の口コミを参考にしつつ、リクナビを含め複数のサイトやアプリに登録した。「自分のデータがどう扱われているか分からないけど、就活は情報戦。そんなことも言ってられない」

 都内の私立大3年の女性(21)は「参加したインターンシップの企業名を記入したり、学生証の写真を送ったり。どう活用されているのだろう」と首をかしげる。企業側に提供する個人情報の量に対し、開示される情報が少ないと不満げだ。

 リクナビ問題は、来年の改正に向けて見直しが進む個人情報保護法に大きな影響を与えた。衝撃を受けた政府の個人情報保護委員会は、経済界に厳しい改正項目を盛り込んだ。例えば内定辞退率の算出に使われたサイト閲覧履歴の「クッキー」に関しては、提供先が情報を照合して個人を特定できる場合、本人の同意を必須とした。

 民間団体も対策に乗り出した。企業や識者でつくる「ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会」は11月、採用や人事に人工知能(AI)を使う際の指針案をまとめた。今回行政指導を受けたリクナビ運営会社のリクルートキャリアや三菱商事を含む法人会員約90社に、データの利用目的を具体的に示すことや情報の取扱責任者、専門部署の設置を促す。

 ただ、個人情報保護法の改正案は違反企業への課徴金が経済界の反対で見送られ、協会の指針案にも法的拘束力はない。

 文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所の平野恵子所長は「学生が自ら対策を取るには限界があり、社会全体がこの問題に関心を持ち続けることが大事だ」と指摘。「個人情報を適正に取り扱っているかどうかは、就活生にとって企業選びの基準にもなり得る。認証マークを作るなどして可視化に取り組むのも有効では」と話した。

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