海外情勢

中国、貿易交渉にらみ北カードで米を揺さぶり 制裁緩和提案で牽制

 【北京=三塚聖平】ロシアとともに対北朝鮮制裁の一部緩和を求める決議案を提案した中国は、6月には習近平氏が国家主席として14年ぶりに訪朝するなど北朝鮮への関与を強化。後ろ盾としての存在感を再び増している中で、対北制裁の緩和を求める場面が目立つようになっている。最初の山を越えた米国との貿易協議が今後も続くことから、北朝鮮を外交カードとして米国を牽制する狙いも透けて見える。

 中国官製メディアは「“クリスマス危機”の可能性が増している」(共産党機関紙・人民日報系の環球時報)と米朝関係の厳しさを強調する。制裁緩和という北朝鮮の呼びかけに米国が応じなければ、朝鮮半島情勢が制御不能になるとの見方を環球時報は伝える。

 国営新華社通信によると、中国の張軍国連大使は11日に開かれた国連安全保障理事会の緊急公開会合で「制裁は手段に過ぎず目的ではない」と強調。「現在の情勢は非常に複雑で敏感、脆弱(ぜいじゃく)だ」と指摘し、対話や緊張緩和を優先させるべきだとの立場を示した。

 一時関係が悪化していた中国と北朝鮮は、昨年3月に金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が北京を訪れて習氏と会談したことを機に、一気に接近を始めた。表向き中国は、安保理の制裁決議を順守しているという姿勢をアピールするが、水面下では制裁履行が緩んでいると指摘される。

 中国が対北制裁緩和にこだわる背景には米国との対立がある。米中両政府は貿易協議で「第1段階」の合意に達したが、今後も「第2段階」の協議が予定されている。紆余曲折(うよきょくせつ)も予想される中で中国としては交渉カードをそろえておくに越したことはなく、自らが影響力を強める北朝鮮の存在は米国への交渉材料になるものとみられる。

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