データで読む

チリ、暴動の根底に経済格差の拡大

 チリでは、10月の地下鉄料金引き上げの発表を受けて、大規模デモが発生した。暴動への懸念からチリ・ペソが急落したほか、同国での開催を予定していた11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)は中止を余儀なくされた。

 国民の反発の背景には、国内景気の低迷がある。チリ経済は、銅を中心とした資源輸出により1990年頃から高成長を遂げた。1人当たり名目国内総生産(GDP)は約1万6000ドル(約173万円)と中南米では高く、2010年には経済開発協力機構(OECD)にも加盟した。しかし、足元では最大の貿易相手国である中国の景気減速などにより、輸出が停滞し、成長が鈍化している。

 混乱の根底には、経済格差の拡大に対する国民の不満がある。経済格差を示すジニ係数は、OECDで最大となっている。この背景として、教育格差があると指摘される。チリでは、早くから教育の民営化が進められた。当初は、競争を通じて教育の質を高める観点から取り入れられたが、私立校の学費が引き上げられたため、富裕層の子弟ほど進学やその後の就職が有利な状況をもたらし、格差の拡大につながった。

 政府は地下鉄料金の引き上げを凍結し、デモの沈静化を図るとともに、通貨防衛のため大規模な為替介入に踏み切った。しかし、根強い国民不満を和らげるには、貧困層が教育を受ける機会を拡大するなど、中長期的な格差解消策への取り組みが重要と考えられる。(編集協力=日本政策投資銀行)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus