海外情勢

“棺おけハウス”で生活も 香港市民の5人に1人が貧困層、格差拡大に怒る若者

【苦悩する香港(上)】

 中国マネーで住宅価格が高騰

 香港で大規模な抗議活動が本格化してから半年が過ぎた。デモに参加する若者たちの怒りの大きな要因の一つとなっているのが格差の拡大だ。約750万人の香港市民の5人に1人が貧困層。中国マネーによる不動産投機で住宅価格が高騰し、購入どころか賃貸ですら住居の確保が難しいのが実情だ。きらびやかな高層ビルのネオンの陰で、怨念が渦巻いている。

 棺おけハウス

 「未来に希望なんてかけらもない」。九竜地区の繁華街モンコック(旺角)の古びたアパートの一室でレイモンド(69)がつぶやいた。ベニヤ板で2段ベッドのように壁と床が仕切られ、15人が暮らす。“棺おけハウス”と呼ばれる極小賃貸住宅だ。

 レイモンドが借りている「部屋」はベッド一つ分の広さ。座れば天井に頭が付き、立つこともできない。扇風機、靴、歯ブラシ、洋服、下着、カップ麺。敷きっぱなしの布団の上に寝る場もないほど物があふれ、すえた臭いが鼻を突く。これで家賃は月に2100香港ドル(約3万円)だ。大量のダニが繁殖し、体中にかまれた痕が残る。

 米国の調査会社デモグラフィアによると、香港は住宅の平均価格が平均収入の20.9倍で、世界で最も住宅購入が難しい都市。日本で言えば、昨年の会社員の平均収入は約440万円のため、平均的な住宅価格が9000万円を超える感覚だ。

 「政府は無策」

 8日の大規模デモに参加した会社員、ピーター(23)は「どれだけ働いても家を買うには2世代で払い続けなければならず、それでも買えるのはものすごく小さな家」と話す。今は両親と同居するが、いつ自分も貧困層になるか常に不安を抱える。「若者の最大の悩みだ」と訴え「無策な政府は変えなければいけない」と語気を強めた。

 レイモンドが受け取る生活補助は1カ月に5000香港ドル。家賃を払うと食費に回せるのは2000香港ドルにも満たない。肉や魚が食卓に上ることはほとんどない。部屋で火は使えないため、お湯で蒸しただけの野菜が主食だ。

 貧困層の支援を続けているコービー(30)は「政府は人々が死なない最低限のことしかせず、貧困脱却の施策を全くしていない」と批判する。「毎日人生のカウントダウンをしているだけさ」。レイモンドが寂しい笑みを浮かべた。(敬称略、香港 共同)

 先月下旬の地方選で民主派が圧勝し、高揚感に包まれた香港。だが、その陰で社会問題は残されたままで、将来への不安から海外へ移住する人も急増。社会の分断は深まり、親中派は声を上げられなくなっている。苦悩する香港を3回に分けて伝える。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus