企業の間に性的少数者(LGBT)の社員が働きやすい環境作りを目指す取り組みが広がっている。2016年に事実婚の相手や同性パートナーを社員の配偶者扱いとし、慶弔休暇や各種手当など福利厚生の対象とする制度の運用を開始した損害保険ジャパン日本興亜に続き、積水ハウスも11月に同様の制度を導入した。LGBTに配慮した制度導入は外資系企業が先行していたが、日本の大企業にも広がりつつある。
各種調査によると国民の8~10%がLGBTとされる。日本企業は、人材の多様性を重視するダイバーシティと、それを事業や業務へのイノベーション(革新)につなげる観点からLGBTへの取り組みを強化している。
先行する損保ジャパンは、12月15日までの1カ月間をLGBT理解促進強化月間「PRIDE MONTH」とし、13日に全社向け勉強会を開いた。さらに、LGBT当事者、有志により社員参加型推進組織「LGBT-ALLYコミュニティ」を今年4月に立ち上げ、社内で500人を超えたALLY(アライ、LGBTの支援・理解者)宣言者の拡大を目指す。
社員の意識変革にとどまらず、事業面での対応も進む。大手PR会社のプラップジャパンは、メディアや企業の広報担当者への情報発信にも取り組む。特定非営利活動法人(NPO)「虹色ダイバーシティ」(大阪市)が都内で11月25日に開いた、子育て経験のあるLGBT当事者を対象とした調査のメディア向け発表会にも協力した。企業の広報・PR業務ではLGBTを扱う際の発表文やホームページの添削を手がけており、東京五輪・パラリンピックに向け、「オフィシャルスポンサー企業からコンサルティングや助言の引き合いもある」という。
損保ジャパンは昨年1月の自動車保険に続き、今年10月には火災保険、傷害保険にも配偶者の定義を同性パートナーに広げ、補償対象とした。損保に加え、生命保険大手も商品面で同様の対応が進む。
12月に完成した新国立競技場はジェンダーフリーの男女共用トイレを各階に設けた。これに先立ち、TOTOは「性の多様性を考えよう」と、事業と関連する公共トイレ(パブリック・トイレ)での啓発活動に取り組んできた。LGBTを受け入れる流れは世界規模で加速しており、企業の取り組みが今後、一段と広がりそうだ。(鈴木伸男)