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保護主義に対抗、家計に恩恵も TPP発効から1年、次の焦点は何か

 米国を除く11カ国による環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が発効してから、今月30日で丸1年が経過する。輸入品の関税引き下げによって家計に恩恵をもたらしたほか、輸出関税の引き下げや知的財産権の保護など企業の活動も後押し。今後、日本はTPP加盟国の拡大を目指すほか、東南アジア諸国連合(ASEAN)や中国、インドなど16カ国で交渉中の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の妥結も急ぐ。自由貿易圏を拡大し、保護主義的な動きに対抗する。

 安倍晋三首相は10月の参院本会議で、TPPについて「地域の安定と繁栄に大きな意義がある。米国を含め、できるだけ多くの国・地域が参加することが最善だ」と強調した。

 来年1月に発効する日米貿易協定は、TPPに比べると関税撤廃率の水準などが低く、米国が将来的にTPPに復帰する道筋を残した。日本政府は米国に粘り強く復帰を働きかけるとともに、加盟国の拡大を視野に入れる。すでにタイなどがTPP加盟に関心を示しており、日本政府もこれを支持している。

 TPPは昨年12月30日、メキシコ、日本、シンガポール、ニュージーランド、カナダ、オーストラリアの6カ国間で発効。その後、ベトナムを加えた7カ国間で効力が生じている。残る4カ国も国内手続きを終え次第、発効する。11カ国で発効すれば、世界の国内総生産(GDP)の約13%、人口約5億人の巨大な自由貿易圏となる。

 日本にとって、安価な食品の輸入は消費者にプラスになる。一方で、日本政府は農林水産物の生産額が最大で1500億円減少すると試算。それでも、輸出や投資の拡大などで、日本のGDPが年7兆8千億円押し上げられ、雇用は約46万人増える見通しだ。

 日本はTPPなど多国間の貿易協定を推進することで、保護主義的な動きを強める米国と、技術移転の強要や国有企業の優遇といった不公正な貿易を続ける中国を牽制する狙いだ。

 次の焦点は、来年の妥結を目指すRCEP交渉に移っている。ただ、対中国赤字に悩むインドが離脱を示唆。「自由で開かれたインド太平洋」構想を掲げる日本は、インド抜きでは中国の影響力が強まることを懸念しており、あくまでも「インドを含めた16カ国での妥結にこだわる」(日本政府高官)方針だ。(大柳聡庸)

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