アルゼンチンは、2001年にデフォルト(債務不履行)に陥るなど長年、財政赤字、通貨下落などに悩まされてきた。1人当たり国内総生産(GDP)はその後回復したが、10年代に入り伸び悩んでいる。対照的に米国経済拡大の恩恵を受けるメキシコは高い成長が続き、18年に1人当たりGDPでアルゼンチンを上回った。15、16年に資源価格急落を受けマイナス成長となったブラジルも、資源価格の安定化などにより底入れの兆しがみられる。
15年にアルゼンチンで発足したマクリ前政権は、それまでの通貨・貿易規制などの政府介入型の政策を見直した。通貨の大幅切り下げで経常収支の改善を図るとともに、財政赤字の是正などの構造改革や、資本規制撤廃や輸入自由化など、市場機能重視の経済政策に取り組み、国際的な評価も高かった。
しかし、輸入自由化などにより経常赤字が大幅に拡大したことで、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の脆弱(ぜいじゃく)さが改めて金融市場の注目を集め、18年には想定以上の大幅な通貨下落に見舞われた。国民から不人気の国際通貨基金(IMF)への支援要請、通貨防衛と高インフレ抑制のための金融引き締めを余儀なくされ、19年もマイナス成長が見込まれている。
景気悪化による国民の不満などで、マクリ前大統領は10月の選挙で敗北。12月に発足したフェルナンデス新政権は、財政・金融の緩和、資本規制強化など、旧来型の政府主導の保護主義的な政策を公約に掲げる。痛みを先送りする政策を国民は支持するが、財政懸念による通貨安圧力の再燃やIMFとの債務再編交渉の難航が予想され、アルゼンチン経済には低迷から抜け出す活路が見いだせない。(編集協力=日本政策投資銀行)