回顧2019

米と貿易協定、農家に痛手 韓国との雪解けは先か

 日本は9月、米国と貿易協定締結で最終合意した。対日貿易赤字の削減を狙うトランプ政権による日本車への追加関税を回避するため、約72億ドル(約8000億円)分の米国産農産物について関税を撤廃、削減し市場を開放。一方、米国による自動車関税は維持され、昨年発効した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に比べ厳しい内容となった。

 2020年1月1日の発効後は米国産の牛豚肉、チーズやワインなどの関税が大きく下がり、消費者にとっては利点だが、国内農家にとっては逆風だ。安い海外産品との価格競争が起きるため、TPPの影響も加味すると政府は国内の農業生産額が1200億~2000億円減少すると見込む。

 このため政府は国内対策として農家への支援を決定。日本産牛肉の輸出拡大のため増産を後押しするほか、「和牛」の受精卵や精液が海外に不正に持ち出されるのを防ぐなどブランド保護も強化する。収益力向上や海外市場の開拓が国内農業の喫緊の課題となる。

 米国は来年、日本に対し、サービス貿易や投資分野にも範囲を拡大した貿易交渉「第2弾」を迫る可能性もあり、今後の行方が注目される。

 いわゆる徴用工問題を背景に貿易管理をめぐる日韓の対立も表面化した。日本政府は今年7月、「フッ化水素」といった半導体の製造過程などで必要な材料3品目の韓国向け輸出規制を強化。8月には安全保障上の輸出管理で優遇措置を取っている「ホワイト国(優遇対象国)」から韓国を除外した。

 一連の措置に韓国側は激しく反発し、韓国では日本製品の不買運動が起きた。日本の財務省が11月に発表した貿易統計では、10月の韓国向けのビール輸出は1999年6月以来、約20年ぶりにゼロとなった。訪日客の減少も深刻で、10月の韓国からの旅客は前年同月比で65.5%も減った。

 韓国側は輸出管理厳格化措置の早期撤回を求めているが、日本側は慎重姿勢を崩しておらず、両国の関係改善には時間がかかりそうだ。

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