海外情勢

イスラエル、大国の板挟み 対中関係強化警告の米に配慮

 イスラエルが中国からの投資に警戒を強めている。ハイテク技術を求める中国と、巨大市場への進出を狙うイスラエルは近年、経済関係を深めてきた。だが「安全保障上の脅威」を理由に最大同盟国の米国が見直しを迫ったことを受け、イスラエルが方針転換に踏み切った。米中の攻防が波及した形だ。

 イスラエル首相府は10月30日、安全保障の観点から外国企業の投資を認めるか否かを判断する諮問委員会の設置を決めたと発表した。対象となるのは金融、通信、インフラ、運輸、エネルギーの各分野。財務省が主導し、国防や安全保障委員会、外務などの代表者が参加。2020年1月の活動開始を目指すとした。

 首相府の声明は特定の国に言及していないが、念頭にあるのは中国だ。イスラエルから中国に軍事情報や先端技術が流出する懸念があり、トランプ米政権は再三、イスラエルに中国との関係見直しを要求。応じなければ軍事協力や情報共有を限定すると、警告を繰り返してきた。

 発表直前の10月28日にはイスラエルを訪れたムニューシン米財務長官がネタニヤフ首相と会談、諮問委員会設置について最終調整したとされる。

 米国が特に懸念するのは、イスラエル北部にあるハイファ港だ。イスラエルは15年、同港の運営権を21年から25年間、中国の国有企業である上海国際港務集団(SIPG)に貸与する契約を結んだ。見返りにSIPGは新たな埠頭(ふとう)建設のため20億ドル(約2186億円)を投入する。

 このプロジェクトを通じ、中国には巨大経済圏構想「一帯一路」の一環として地中海にシーレーン(海上交通路)を確保する狙いがある。

 だがハイファ港付近の港には、米海軍第6艦隊の艦艇が燃料補給などのため寄港する。米国は、中国がハイファ港の運営を始めれば、米艦艇へのスパイ活動を行う恐れがあると懸念。21年以降、寄港を停止する可能性があると伝えたとの情報もあり、イスラエル側は契約の見直しを検討しているとされる。

 イスラエル運輸省関係者は「最も重要なのは米国との同盟関係」とした上で「中国との経済的つながりも、わが国の成長には欠かせない」と指摘。「どちらにも悪影響が出ないよう配慮しなければならない」とし、対立を深める米中の間でバランスを取る必要があるとの考えを示した。(エルサレム 共同)

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