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ジェトロ 2020年のBRICS経済を占う インド

 再選モディ氏、問われる成果と真価

 2019年5月、モディ首相率いるインド人民党(BJP)は下院総選挙で単独過半数を上回る議席を獲得し、圧勝。モディ政権は2期目に突入した。

 BJPの華々しい勝利とは対照的に、19年のインド経済は減退が目立った。特に18年後半から減退感を強めた自動車の販売台数は、19年4月以降、対前年同月で大幅に落ち込んだ。乗用車の販売台数は10月に祝祭シーズンの特需で1年ぶりのプラスに転じたものの、11月は前年同月比0.8%微減の26万3773台と、再びマイナスに転じている。

 不良債権問題に伴う銀行ローン融資の厳格化やノンバンクセクターの貸し出し余力の低下などで消費者が調達資金を入手しにくくなっていること、昨今の原油・燃料価格の上昇、自動車保険料の値上げ、4月から導入される排ガス規制強化をにらんだ買い控えなど、複合的な要因が影響しているとみられる。

 第1期でモディ首相が強いリーダーシップの下で成し遂げた高額紙幣の廃止や、物品・サービス税(GST)導入などの大胆な経済改革の反動も景気に影響している。19年11月に発表された同年度第2四半期の実質国内総生産(GDP)成長率(11年基準)推計値は前年同期比4.5%と、18年度第1四半期以降6四半期連続での減速となった。第1期でモディ政権が掲げた国内の製造業振興政策「メーク・イン・インディア」も十分な効果があったとは言い難く、2期目のモディ政権には経済面での目に見える成果が期待される。

 こうした状況を受け、政府は19年、公営銀行への公的資金の投入や老朽化した政府公用車の買い替え、単一ブランド小売業の調達要件の緩和、法人税の引き下げなど、矢継ぎ早に景気刺激対策を発表した。政策の効果はすぐには表れず昨年のインド経済は厳しい局面に立たされたが、一方でモディ首相によるさまざまな経済改革の効果もあってか、インドは世界銀行の「ビジネスのしやすさ」ランキングでここ数年大きく順位を上げている。

 19年に発表されたランキングでは63位と、18年度から14ランク上昇した。大胆な経済改革には反動や痛みが伴う。まさにインド経済はその調整期であるとも言え、中長期的視点で動向を注視する必要があるだろう。

 19年5月の総選挙では大勝したものの、その後の州選挙では苦しい戦いを強いられているBJP。また同年は、インドで唯一イスラム教徒が多数派を占めていたジャム・カシミール州の自治権剥奪や、市民権法の改正など、ヒンズー主義的とみられる政策も目立ち、特に市民権法の改正をめぐってはインド各地で抗議活動が繰り広げられた。さまざまな課題をはらみながらも進み始めた2期目のモディ政権。今後、その真価が問われる。(ジェトロ・ニューデリー事務所 磯崎静香)

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