関西全体で夢洲へのアクセス強化を
--今年の関西経済の見通しは
「ワシントンを訪問して強く感じたのは、中国に対する米側の厳しい見方だった。米中は貿易面だけでなく、安全保障面でも一致していない点が多い。両国の貿易摩擦を背景に、中国の生産拠点に部品や工作機械を輸出している関西企業には明らかに影響が出ている。このような状況は、東アジアからの訪日外国人客(インバウンド)の消費にも影響を及ぼしている。この状況がずっと続くとは思わないが、足元では不安な状況が増えてきた。リスクに対する備えをしっかり考えながら手を打たないと、難しい年になるだろう」
--関西の大型開発の目玉は
「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(大阪市、USJ)では任天堂のゲームをテーマにした新アトラクションが開設される。世界的な人気になるのでは、と期待している。秋にはJR大阪駅北側の開発計画『うめきた2期』の着工が予定されているほか、同駅西側の開発も本格化する。大阪駅は新幹線、また関西国際空港に飛行機で来る人も集まりやすい。買い物だけでなく、大学のサテライトオフィスも相次ぎ開設されるなど、知の集積地としての顔も持つ。インバウンドが多く集まる大阪の『ミナミ』だけでなく、『キタ』の核である大阪駅周辺が活性化することの意義は大きい。そこから京都や瀬戸内海、高野山など、関西各地に人を送り出すこともできる」
--2025年大阪・関西万博への準備は進んでいるか
「約2800万人とされる来場者をいかにストレスなく各地から輸送し、開催地の夢洲周辺を回遊していただけるか。それはひとえにアクセス整備にかかっている。大阪メトロ中央線の夢洲への延伸は、確実に万博に間に合わせる必要がある。船による海上輸送というのも、もちろんあっていいだろう。個別の鉄道企業がどうこうではなく、オールジャパン、また大阪・関西全体で、夢洲へのアクセスの重要性を認識して推進していくことが大切だ」
--万博が開催される夢洲では統合型リゾート施設(IR)誘致にも力を入れている
「人口減少のなか、大阪、関西が生き残っていくキーワードは絶対にこの夢洲の万博であり、また夢洲に誘致できるであろうIRだ。その夢洲へのアクセスを強化して、梅田や難波、また神戸や奈良など大阪以外のエリアにもつながっていくというのが関西のベストの姿。今年の関西経済を楽観視はしていない。しかし、縮こまっているだけでもいけない。一刻も早く、経済の本格的な活性化に向けて手を打つべきだ」
【プロフィル】池田博之
いけだ・ひろゆき 横浜国立大経営学部卒。1983年大和銀行入行。りそなホールディングス執行役、近畿大阪銀行会長などを経て、2018年3月からりそな銀行副会長。同年5月から関西経済同友会代表幹事を務める。福岡県出身。