海外情勢

マルコス政権下で強制退去、島に住民戻る 動物共存で観光振興推進

 フィリピン西部の小島で、アフリカから連れてこられたキリンやシマウマが放し飼いにされている。長期独裁政権を敷いた故マルコス元大統領が強制移住させ、代わりに住民を島外に退去させた。古里を追われた住民の帰還は30年以上を経て正式に許可され、現在は人間と動物の平和な共存が続いている。

 広さ約37.6平方キロのカラウィット島。南西部のサファリパークで観光客がはしゃぎながらキリンに餌の葉っぱを食べさせていた。近くではシマウマがのんびり歩いている。

 動物たちの「先祖」はケニア出身。職員のネイル・ヤプラさんによると、1976年、当時大統領だったマルコス氏がケニア政府から草食動物を贈るとの申し出を受け、島をサファリパークにすることを発案した。約100世帯を近隣の島に立ち退かせ、77年に104頭を船で運び込んだとされる。

 肉食獣のいない環境で動物は繁殖したが、たまらないのは土地を追われた人たちだ。86年のマルコス政権崩壊後、帰還する人もいたが、島は動物の保護区に指定されており、不法占拠者扱いされた。

 40代のラミル・アグネスさんの祖父母と両親も島に住んでいたが追い出され、家は当局に壊された。他の住民とともに80年代後半に島に戻ったものの、立ち退きを求める政府と土地返還を求める住民が提訴の応酬になるなど対立が続いた。

 政府から居住を認められたのは2010年。今は2000人以上がサファリパークとは反対の東岸に住む。農業と漁業が生活の糧だが、最近では目の前に広がる海でのジュゴンウオッチングを目玉に、観光振興に力を入れる。アグネスさんは「動物に泣かされ、動物に助けられているよ」と苦笑した。(カラウィット島、共同)

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