海外情勢

カンボジアのビル倒壊、低品質資材利用原因か 相次ぐ惨事で安全対策急務 (1/2ページ)

 カンボジア南部のケップ州で1月3日、建設中の7階建てのビルが倒壊し、36人が死亡、23人が負傷した。カンボジアでは昨年6月にも、シアヌークビルで建設中のビルが倒壊、28人が死亡する事故が起きたばかり。相次ぐ惨事に、建設業界や監督官庁に対する批判の声が上がっている。

 建設現場で寝泊まり

 ケップ州で倒壊事故が起きたのは、3日の午後4時半ごろだった。カンボジアでは、建設中のビルに作業員が一家そろって寝起きすることは珍しくなく、今回も、その日の作業を終えた大勢の作業員とその家族が建物内にいたとみられる。地元紙の報道は、救出された人の話として、「夕飯の準備をしようと立ち上がったときに、突然周囲が暗くなり泥に埋まってしまった。はじめは自分の目が見えなくなったのかと思うほど瞬間的だった。近くでゲームをしていた息子は亡くなってしまった」と話した。

 全ての階が崩れ落ちた現場では必死の救出作業が続き、23人が救出された。プノンペン・ポスト紙は、犠牲となった36人のうち14人が女性、5人が子供だったと伝えている。

 カンボジアのフン・セン首相は、事故発生直後に現場に入った。短期間で大勢の犠牲者が出る倒壊事故が相次ぎ、批判の矛先は建設を監督する担当官庁に向けられていただけに、迅速な対応と、首相自らが現場で救出を指揮する姿を見せることが重要だったようだ。

 カンボジア政府は翌日には、11の関係省庁からなる調査委員会を設置。事故の原因究明に取り組む姿勢を素早く見せた。クメール・タイムズ紙によると、原因はまだ判明していないものの、低品質の建築資材を使ったことなどが関係しているとみられている。

 カンボジアでは2019年6月のシアヌークビルの事故のほか、同12月にはシェムリアップで建設中の寺院が倒壊し3人が死亡、13人が負傷する事故も起きた。この他にも建設現場での死亡事故が目立つという。

 これを受け、クメール・タイムズ紙は今月6日付の社説で、担当省庁や建設業界に厳しい指摘をしている。同紙は「建設業界は経済成長に貢献しているが、一方で建設の品質と安全管理については問題視されている」として、まず業界に技術的な側面での管理の徹底や、作業の安全性の確保を訴えた。さらに、建設許可を出す省庁に対し不正行為のないようにと注文をつけた。「このような事故は投資家の信頼も失うものだ」と、経済成長にも悪影響を及ぼすとしている。

 また、地元紙によると8日にはプノンペンで、建設・土木作業員らの団体がシンポジウムを開いた。建設会社に対し、現場の安全管理を徹底するとともに、建設中の建物で寝泊まりする危険行為をやめさせることなどを強く訴えた。カンボジア政府に対しては、建設関連の事故が発生した場合に責任の所在をあいまいにせず、「責任者を追及し、法に基づき罰すること」を求めた。

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