海外情勢

カンボジア、外国人客の伸び鈍化予測 「嫌中国」の高まりも一因か

 「中国依存」に危機感、新型肺炎の影響懸念

 カンボジア中央銀行が1月上旬に発表した報告書によると、政府は2020年に同国を訪れる外国人客を19年の670万人から6.1%増の710万人超と見込んでいる。しかし、前年比伸び率をみると、19年の8.7%、18年の10.7%、17年の11.8%と、ここ数年は鈍化傾向にある。クメール・タイムズ紙などが報じた。

 中でも世界遺産アンコール遺跡群を擁するシエムレアプでは、観光客が減少傾向にある。アンコール遺跡群の入場券販売などを担うアンコール・エンタープライズによると、19年に同遺跡群を訪れた外国人観光客は約220万人で、18年の250万人より15%も減少した。売り上げも19年は9900万ドル(約108億円)で、前年の1億1600万ドルを下回った。

 ベトナム人など減少

 「ドル箱」ともいえるアンコール遺跡群への観光客減について、カンボジアのフン・セン首相は「カンボジアの観光地が多様化し、観光客が海浜部のシアヌークビルなど別の観光地へと分散したことの証しだ。全国でみればわが国を訪れる外国人客は増えている」としている。しかし現地の旅行業者の中には、地元紙の取材に対し、「19年は例年より暑かったこともあるが、中国客を重視しすぎる観光政策も影響している」と話す人もいた。

 カンボジアを訪れる外国人のうち、中国人は200万人超で38%を占める。減少傾向にある2位以下のベトナム人、ラオス人、タイ人を大きく引き離した。カンボジア政府は、中国からの観光客を呼び込もうと集中的な宣伝策をとり、両国間の直行便も増やした。シエムレアプの旅行業者の意見は、「中国依存」が高く、幅広い外国客に対応する観光政策ではないという指摘だ。

 カンボジアへの日本人客は、前述の上位4カ国と韓国、米国に続く第7位で、年間約21万人と、中国人客の10分の1にとどまっている。プノンペンへの直行便を運航する全日空は23日に発表した20年度の国際線航空輸送事業計画の中で、現在は1日1往復している便を、3月29日~6月30日の間、週3往復に減便することを発表した。春休みや4月のカンボジア正月の旅行シーズンなどには増便されるものの、この期間、安定した利用客数が得られないことが背景にあるものとみられる。

 ビル事故で嫌悪感も

 増加傾向にある中国人客だが、20年も順調に伸びるかどうかは懸念材料もある。

 一つは、中国人客が集中し、チャイナタウン化したシアヌークビルなどで、カンボジア人の間に「嫌中国」ともいえる感情が高まっていることだ。昨年6月にシアヌークビルで倒壊事故を起こした建設中のビルが、中国人の所有で建築許可も得ていなかったことなどから、街に注ぎ込まれる中国マネーに対する嫌悪感が露呈した。現在、シアヌークビルでは違法建築の取り締まりが実施されている。

 この事故と前後して、カンボジア政府は中国人グループによる大規模なオンライン詐欺を相次いで摘発し、さらにその温床となっていたとみられるオンラインカジノの営業ライセンス発行・更新を停止した。このため、シアヌークビルから多くの中国人が帰国したといわれる。カンボジアの過度な中国依存の象徴になったシアヌークビルが、これからどのように変化していくか。その方向によっては、中国人客の動向も変化する可能性がある。

 また、中国・武漢を中心に感染が拡大する新型コロナウイルスによる肺炎の問題も、今後の人の動きに影響する可能性がある。新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大は、湖北省武漢市やその周辺地域を事実上の封鎖状態とするまでになっている。感染が中国全土でさらに深刻化し、また世界各地へと広がった場合には、カンボジアのみならず、世界の観光業に打撃を与えそうだ。(カンボジア日本語情報誌「プノン」編集長 木村文)

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