経団連の中西宏明会長と連合の神津里季生会長が28日、東京都内で会談、2020年春闘が事実上スタートした。中西会長は「賃上げのモメンタム(勢い)を維持することは大前提」と強調。米中貿易摩擦などで景気の先行きに不透明感はあるものの、労使ともに賃上げの必要性で一致した。ただ、具体的な賃上げ手法では意見の違いもあり、今後攻防がくりひろげられる。
神津会長は「日本の賃金水準は世界の中で大きく劣後している」と危機感を表明、賃上げを求めた。連合は今春闘で、賃金体系を底上げするベースアップ(ベア)の要求水準を「2%程度」とし、定期昇給などと合わせた4%程度の賃上げを要求する。各企業内における最低賃金の水準も明示した。また、神津会長は「20年で中小企業や非正規の方々の水準が下がり、経営側も視点をあててほしい」と格差是正を訴えた。
経団連はベアを容認しつつも、支払い能力など経営環境は「個社によって大きく違う」とした上で、職務や成果を重視した配分手法が適切とした。
会談後、主要企業の労使が意見を交わす「労使フォーラム」が開かれ、冒頭、中西会長があいさつ。グローバル化や経済のデジタル化の中で日本が競争力を強化するには「(社員の)働きがいを向上させる職場環境の整備が重要」と述べ、賃上げと両輪で総合的な処遇改善に労使で取り組むべきだと呼び掛けた。新卒一括採用や終身雇用など、日本型雇用の見直しも問題提起した。
これに対し、神津会長は雇用の流動化には「国の政策を含めたセーフティーネットの構築が必要」と強調した。
春闘は今後、産業別や個別企業の交渉が本格化し、3月中旬に大手の回答が集中するヤマ場を迎える。
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■2020年春闘の労使の主張
≪連合≫
◎本格的な分配構造の転換につながり得る賃上げに取り組む
◎「底上げ」「底支え」「格差是正」を掲げ、企業規模や雇用形態による賃金や待遇の格差是正
◎賃金体系を底上げするベースアップ(ベア)について5年連続の「2%程度」、定期昇給などと合わせて4%程度とし、底上げを図る
◎企業内最低賃金協定時給1100円以上で底支えを図る
◎中小企業の賃上げの原資確保には取引適正化が不可欠
≪経団連≫
◎賃上げは自社の実情に応じた前向きな検討が基本。ボーナスを含む多様な方法を組み合わせて議論
◎ベースアップも選択肢。職務や成果を重視した配分が適切
◎グローバル化やデジタル化に伴う競争で人材獲得が困難。日本型雇用制度の見直しが必要
◎業界横並びの集団的賃金交渉は実態に合わなくなっている
◎賃金の引き上げと働きがいを高めるような総合的な処遇改善は両輪