ミャンマー中央銀行はこのほど、「建国の父」と称されるアウン・サン将軍(1915~47年)の肖像画を使った新紙幣の発行を始めた。アウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相の父で、今も国民に敬愛されている。秋に総選挙を控える中、スー・チー氏が父の人気にあやかり、支持固めに利用しているとも指摘される。
アウン・サン将軍は第二次大戦中、ビルマ(現ミャンマー)で抗日運動を率いた。終戦後は英国からの独立交渉を主導したが、独立前の47年に暗殺された。アウン・サン将軍の肖像画が描かれた紙幣の発行は約30年ぶりだ。
新紙幣は1000チャット(約75円)札で、スー・チー氏が率いる与党国民民主連盟(NLD)の議員が発行を提案した。軍系の連邦団結発展党(USDP)が反対したものの、賛成多数で議会の承認を得た。
ミャンマーでは今秋に総選挙が予定される。NLDは優位を保つ一方、圧勝した2015年の総選挙から議席を減らすとの予測が多い。USDP関係者らは、スー・チー氏が国民的英雄である父を描いた紙幣発行で愛国心を刺激し、支持者の結束を固める狙いがあるとみて警戒している。(ヤンゴン 共同)