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「一人っ子政策」廃止も…中国で出生数が急減、中長期的な足かせに (2/2ページ)

 成長率の維持厳しく

 ただし、今後の中国経済にとって中長期的な意味で足かせとなり得るのは、出生数が急速に減少していることであろう。昨年の出生数は前年から58万人少ない1465万人にとどまり、16年に「一人っ子政策」が廃止されたにもかかわらず、3年連続で減少する状況となっている。国家統計局は、昨年の出生数のうち6割弱が2人目以降であるとして、政策廃止の効果を強調する姿勢をみせている。しかし、近年の高い経済成長の背後で子育て費用が高騰している上、「一人っ子世代」の間では旧来の家族観も変容しており、政府の政策誘導が効果を挙げられるかは見通せない。

 政府内では、20年代後半にも総人口が減少局面に転じるとの見通しが共有されているもようだが、足元の状況は想定よりも速いスピードで少子高齢化が進んでいるようである。結果、人口減少局面に転じる時期も前倒しされる可能性は高く、中国経済の潜在成長率は向こう数年以内に大きく鈍化していくことも懸念される。公式統計上は、昨年の経済成長率は6.1%増と29年ぶりの低成長となったが、今後はこうした水準を維持することは一段と厳しくなることを想定せざるを得ないといえよう。

【プロフィル】西浜徹

 にしはま・とおる 一橋大経卒。2001年国際協力銀行入行。08年第一生命経済研究所入社、15年から経済調査部主席エコノミスト。新興国や資源国のマクロ経済・政治情勢分析を担当。42歳。福岡県出身。

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