国内

「特定技能制度」普及に課題 厳密な仕組み、受け入れ数見込み遠く

 外国人労働者が増える中、昨年4月に創設された在留資格「特定技能」制度は低空飛行が続く。受け入れ実績は昨年11月末時点で1019人(出入国在留管理庁調べ)。初年度に最大4万7550人との政府見込みに遠く及ばない。日本で働きたい人に歓迎の声もあるが、働き手として期待した関係者からは「肩透かしだ」と落胆が広がる。

 労働力確保で導入も

 3年前に留学生として来日したベトナム人のマイ・ティ・トゥイさん(24)=埼玉県川口市=は昨年、新在留資格「特定技能」(介護)の試験に合格した。母国で看護師として働いた経験があり「専門学校で日本語を習得した後は、日本で医療関係の職に就きたい」と考えた。ただ当時は、別の専門学校でさらに2年間学んで国家資格の介護福祉士を取得しないと、在留資格のある介護職に就くのは難しかった。

 「日本で働けるチャンスだ」。日本語能力試験と就労分野ごとの技能試験に合格し、審査を通ればよい特定技能の新設は朗報だった。マイさんは初挑戦で合格、今年4月から東京都内の介護施設で働くことが決まった。

 マイさんの就職を支援した外国人専門の人材紹介会社ユアブライト(東京)は「金銭面の理由などで、日本にとどまることが難しい立場だった人にも働く道を開いた意義は大きい」と評価する。

 特定技能制度は人手を補いたい産業界の強い要請に沿い、安倍政権が野党などの反対を押し切る形で導入。技術移転による途上国への貢献が名目の技能実習と違い、人手不足の業種での労働力確保を正面に据えている。

 「『黒船が来るぞ』と導入前はすごい騒ぎで、さまざまな対策も準備していた」。昨年12月、自民党の会合で、ある議員がこう切り出した。大挙して日本に押し寄せるとの予想は外れ「外国人が都市部へ集中するという想定されていた課題も、来日数が少なくて検証できない」と嘆いた。

 厚労省によると、昨年10月末時点の外国人労働者数は165万8804人と過去最高。大きく伸びたのは技能実習だ。

 海外試験少なく

 特定技能が増えない要因として、新規入国者につながる海外での試験の実施回数の少なさが挙げられる。多くの人材が期待できる中国とベトナムでは実施できていない。

 受け入れ企業から見ると事務作業の煩わしさも壁のようだ。ある業界団体幹部は「とにかく提出書類が多く、余裕のない中小企業には負担が重い」と憤る。

 日本総合研究所の山田久主席研究員は「転職ができず酷使されるなど、技能実習の問題の解決に向け取り入れた厳密な仕組みが、制度の使い勝手の悪さを招いた」と指摘。「労働者と時間をかけて関係をつくることができる特定技能は、軌道に乗れば労使双方に利点がある。政府は現場の意見をくみ取って改善に努めるべきだ」と話した。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus