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「ラピュタの島」に大量の漂着ごみ、一体どこから? 阪南大准教授が調査

 明治時代に建造された旧日本軍の砲台跡が残る和歌山市沖の無人島、友ケ島。宮崎駿監督のアニメ映画「天空の城ラピュタ」(昭和61年公開)の舞台に似ているとして近年、インターネットなどで紹介され観光客が増加しているが、この異空間のような島に問題が持ち上がっている。海岸に大量の漂着ごみが打ち上げられ、景観を損ねているのだ。ごみは一体どこから流れてくるのか。流出元を突き止めようと阪南大(大阪府松原市)経済学部の千葉知世准教授(環境政策学)が調査を進めている。(西家尚彦)

 昨年11月中旬、友ケ島の海岸に、千葉准教授とゼミの学生6人の姿があった。袋やバケツを手に腰をかがめ、打ち上げられたごみを次々回収していく。

 千葉准教授がプラスチック製の100円ライターを拾い上げ、まじまじと見つめた。「何か会社名と電話番号がプリントされていますね。こういうのが流出元を探る貴重な情報になります」

 千葉准教授の専門は「環境問題と経済」。豊かさを追求する経済活動が、自然環境にもたらす影響を検証することも研究テーマの一環だ。

 大学のある大阪に近い無人島でごみの蓄積状況を調べてみたいと思い、約2年半前に友ケ島を訪問。その際、大量の漂着ごみを目の当たりにし、昨年からゼミの学生らと本格的に現地調査を始めた。

 友ケ島は紀伊半島と淡路島の間の紀淡海峡にあり、海峡を防備するため明治政府が築いたレンガ造りの砲台や弾薬庫の跡が現在も残る。

 和歌山市によると、平成24年に友ケ島でコスプレイベントがあり、参加者らがインターネットで「『天空の城ラピュタ』のような雰囲気」などと情報発信したのを機に人気に。観光客は24年までは年間2万人程度で推移していたが、25年は3万人超、30年は約7万人に増えた。

 市は昨年、島内の散策スポットを音声案内するスマートフォン用アプリを、音楽大手のエイベックス・エンタテインメント(東京)と共同開発するなど一層、誘客に力を入れる。そんな努力に水を差すのが、大量の漂着ごみだ。

 東京から訪れた40代の夫婦は「島を巡ると異空間に足を踏み入れたような不思議な高揚感があったが、浜辺の漂着ごみを見て一気に現実に引き戻された」と興ざめした様子。

 千葉准教授は、河川などから大阪湾に流れ着いたごみが、海流で友ケ島に漂着した可能性もあると推測する。

 ゼミでは、回収したごみに記された住所や会社名などの情報を分析し、流出元を探る。これまで大阪府大阪狭山市の不動産会社の看板や、大阪府南部に店舗が集中するスーパーマーケットの買い物かごを確認した。

 千葉准教授は、4月に大阪府内の別の大学に移籍するが調査は継続する。今後は、友ケ島に近い和歌山市加太地区に古民家を借りて、研究拠点「加太・友ケ島環境研究会」を立ち上げ、地域住民とも協力しながら定期的に調査を続ける。

 「ごみの流出元の自治体が、周辺自治体に迷惑をかけたうえ、ごみの回収までさせるのは不公平。流出元が特定されれば、広域自治体で問題意識を共有できる」と千葉准教授。市の担当者も「流出元が分かれば、対象自治体に対策を講じてもらい、友ケ島の環境改善につなげたい」と話す。

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