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中国14億の国民が目指す「二つの勝利」 新型肺炎の抑え込み時期がカギ

 中国の14億の国民は今、「二つの勝利」を目指して闘っている。新型肺炎との「人民戦争」と、「小康(ややゆとりのある)社会」の全面的実現を目指す闘いに打ち勝つことである。(元滋賀県立大学教授・荒井利明)

 昨年末に始まる新型肺炎との闘いは、人民戦争、総力戦、阻止戦と称されて、感染拡大の阻止に全力が注がれているが、今月に入って以降、今年中の達成が国家目標となっている小康社会の全面的実現にも力を入れることが唱えられている。

 習近平は今月3日の共産党中央政治局常務委員会で、感染状況が特に深刻な地域は感染拡大阻止に全力を集中すべきだが、その他の地域は感染拡大阻止とともに小康社会の全面的実現に取り組むよう指示している。そして「中国は大国で強靭(きょうじん)で、潜在力も大きい」と述べ、自信を持つよう呼びかけている。

 また12日の同常務委員会では、新型肺炎の影響を最小限に抑え、小康社会の全面的実現に努めることが強調された。これを受けて共産党機関紙「人民日報」(2月13日付)の論評は、「二つの勝利を勝ち取ろう」と訴えている。

 小康社会全面的実現の指標の一つは、今年の国内総生産(GDP)を2010年のGDPの2倍に増やすことだが、中国社会科学院副院長の蔡●は、今年の経済成長率が5.7%であれば達成されると指摘し、それは実現可能だと述べている。

 また農村の貧困層をなくすことは、小康社会の全面的実現の前提条件である。中国は毎年1000万を超える農民を貧困から脱却させており、19年末の農村の貧困人口551万人を今年中にゼロにすることも可能だと蔡●は述べている。

 二つの勝利を手にすることができるか否かは、新型肺炎の感染拡大をいつ抑え込むことができるかにかかっているといえよう。中国の指導者は、「中国の特色ある社会主義制度」には優位性があり、新型肺炎との闘いに必ず勝利することができると強調している。また中国のメディアは、中国が感染拡大との闘いの中で示した「中国の速度」「中国の力」に感動したとする海外の声を盛んに伝えている。

 習近平は3日の常務委員会で、今回の新型肺炎は中国の統治システムと能力にとっての試練であると述べ、感染拡大に対応する中で弱点や不足な点も明らかになったと語り、システムの健全化、能力の向上を訴えている。初期対応のまずさなどを踏まえての発言だろう。(敬称略)

●=日へんに方

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