フィリピンの首都マニラ近郊で複数の大規模な空港建設・改修計画が進んでいる。既存のマニラ国際空港の旅客受け入れ能力は限界に達しており、狭すぎるなどと利用者の評判も悪い。玄関口の整備に乗り出したドゥテルテ政権だが、現在の「低空飛行」から脱することはできるのか。
「ターミナルビルが混雑し過ぎていて気分が悪くなったの」。マニラ空港の玄関脇に置かれたいすに座っていたピア・マイテムさんは疲れ切った表情を浮かべた。
世界最悪の空港-。マニラ空港はかつて、こんな不名誉な地位に甘んじたことがある。旅行関連サイト「スリーピング・イン・エアポーツ」による世界の空港ランキングで2011、13年にワースト1位に選ばれ、12年はワースト2位だった。
運輸省幹部は「入国審査場の大行列、航空機の遅延の多さ、土産店や飲食店の少なさ、4つあるターミナルの接続の悪さ」が不人気の理由とみる。以前は利用者にチップをせびる職員や、雑談ばかりで仕事をしない職員も目についたという。
ランクはその後、やや持ち直したが、3100万人の旅客受け入れ能力に対し、18年は4500万人が利用。旅客の分散が課題となっている。
政権はマニラ近郊での空港増設を打ち出し、地元の財閥サンミゲルがマニラの北隣ブラカン州に新空港を建設する案を採用した。約7340億ペソ(約1兆5800億円)を投じ、2500ヘクタールの用地に滑走路4本を整備する計画。25年ごろに完成し、年間1億人の旅客を受け入れる。
マニラ南方のカビテ州政府は、サングレーポイント空軍基地の隣に新空港を建設。19年11月に貨物用として運用を始め、将来は拡張して国際空港化を目指す。
マニラの北西約90キロにあるクラーク国際空港も新ターミナルを建設中で、完成すれば受け入れ能力は現在の3倍近くの1220万人になる。
ただ、空港設備が増強されても、不当なチップを迫り、仕事をしない職員がいては利用者の満足度は高まらない。人材育成や規律の向上が次の課題となりそうだ。(マニラ 共同)