現場の風

日本貿易振興機構 ベトナム経済好調、日本の中小進出増

 □日本貿易振興機構(ジェトロ)ハノイ事務所長・中島丈雄さん(53)

 --米中貿易摩擦でベトナム投資への関心が高まる

 「2019年のベトナム向け直接投資(認可ベース、速報値)の件数は5264件(前年比21.2%増)と過去最高だったが、金額は約225億ドル(14.1%減)と伸び率は鈍化した。国・地域別では韓国が件数、金額ともに首位。中国は日本に次ぎ3位だが、伸びは急増した」

 --ベトナム経済の行方は

 「中国生産を縮小してベトナムに新工場を建設する動きがあり、最大の輸出先の米国向けは伸びた。ただ、ベトナム政府は、さらに輸出が急増した場合の米国政府の貿易不均衡への対応も懸念しており、中国と米国との距離感をうまく測っていくと思う。経済は好調だが、政府は新型コロナウイルスの影響の長期化で成長率が6%を切る可能性もあると発表している」

 --日本からの直接投資は

 「19年の投資件数は過去最高だったが、前年は住友商事などが参画するスマートシティー開発の大型案件があり、この反動で金額ベースの順位は1位から4位に下がった。進出企業数は、12年以降は毎年100社以上増加し、中でも中小企業の進出が増えている」

 --今後のビジネスチャンスは

 「若年人口が増え、今後20年は新規労働力の増加も続く。10年くらいで人口1億人を突破し、内需も期待できる。北部ハノイでも富裕層が増え、スポーツクラブなどサービス業の進出も目立つ。インフラの商機もあるが、スマートシティーや工業団地などは民間主導が基本だ」

 「ただ課題もある。人手不足が顕在化し、日系企業からは従来のような賃金水準で雇用するのが難しいとの声が多い。現地企業の経営実態を正確に把握することが難しい面がある。03年から投資環境改善を議論する官民の枠組みがあり、こうした場を活用していきたい」

                  ◇

【プロフィル】中島丈雄

 なかじま・たけお 青山学院大学大学院修士課程修了、1992年4月日本貿易振興会(現日本貿易振興機構=ジェトロ)入会。サンフランシスコ北米主任調査研究員・広域調査員、北米課長、サービス産業課長、対日投資次長などを経て、2019年9月から現職。東京都出身。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus