とはいえ、今回の「経済政策研究所(EPI)」の調査結果に疑問を呈する声もあります。ロサンゼルスのコンサルティング会社「ビーコン・エコノミクス」のエコノミスト、クリストファー・ソーンバーグ氏は前述のロサンゼルス・タイムズ紙に「中国と貿易取引を行わなければ、これまで彼らが奪った多くの仕事が魔法のように現れるという仮定に困惑させられる」と前置きし「メキシコ、ベトナム、インドネシアに対する貿易赤字の影響も見過ごせない」と述べました。
しかし、トランプ米大統領が憤慨するように、中国が米の多くの雇用を奪っていることは他のデータからも明らかなのです。2018年5月14日付の米金融情報サイト、マーケット・ウォッチなどによると、米では名門マサチューセッツ工科大学(МIT)のデビッド・アーサー氏やアップジョン研究所のスーザン・ハウスマン氏といった気鋭の経済学者たちによって、米の雇用を大きく奪ったのは、企業が進めるロボット化よりも中国であるとの研究結果が出ているからです。
「経済政策研究所(EPI)」のロバート・スコット氏は前述のロサンゼルス・タイムズ紙に「巨額の対中貿易赤字を削減するには米ドルと他国の通貨との為替レートの再調整しかない」と断言し、「米ドルの価値を25%、もしくは30%下げる必要があります。しかし、ウォール街は強いドルを好むため、トランプ米大統領はこうした通貨問題に積極的に取り組みませんでした。しかし、この方法が海外企業への製造委託のコストを安くするのです」と訴えました。
今回、明らかになった「経済政策研究所(EPI)」の調査結果を受け、これまで制裁関税による報復合戦を繰り広げてきた米中貿易戦争は新たな展開を迎えるかもしれません…。(岡田敏一)
【プロフィル】岡田敏一(おかだ・としかず) 1988年入社。社会部、経済部、京都総局、ロサンゼルス支局長、東京文化部、編集企画室SANKEI EXPRESS(サンケイエクスプレス)担当を経て大阪文化部編集委員。ロック音楽とハリウッド映画の専門家、産経ニュース(https://www.sankei.com/)で【芸能考察】【エンタメよもやま話】など連載中。京都市在住。
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