海外情勢

元ゲリラ、今はアヒル農家 インドネシア・アチェ、仲間と結束強く

 インドネシア・スマトラ島北端アチェ州に、同国からの独立闘争を展開した武装勢力「自由アチェ運動」(GAM)の元メンバーが営む食用アヒル農場がある。国軍との間で約30年に及んだ闘争は、2004年のスマトラ沖地震による大津波を機に終結。山中でゲリラ活動をしていた元メンバーらは銃を置いた後も結束が強く、助け合いながら平穏に暮らしている。

 津波の最大被災地だった同州バンダアチェ。借地に造った農場に、簡素な木の小屋と池がある。GAMの元地区部隊長、ナスルルさんが餌を持って行くと、一斉にアヒルが鳴き声を上げて寄ってきた。

 かつては約30人の部下を束ね、家族と離れて山中にこもり、戦闘に備えていたナスルルさん。地震発生の4日後、家族の安否を確認するため山を下り、身分を隠して避難所を転々とするうちに、05年の和平を迎えた。

 GAM幹部の一部は和平後、政治家に転身。階級が高くなかったメンバーらは職を得るのが難しく、生活は困窮した。ナスルルさんは16年、インドネシアで人気が出てきたアヒル料理に使うアヒルの農場を妻の勧めで始めた。

 妻の結婚指輪を売って得た700万ルピア(約5万3000円)を元手に150羽を買い、現在では計約2000羽を飼育。農場は州内3カ所に増え、レストランなどに卸している。雇っている元部下16人にも、まとまった月給を払えるようになった。

 闘争当時、国軍に包囲されて仲間を殺され、自身も死を覚悟したことがあったナスルルさん。「今は隠れたりせずに(堂々と)家族に会うことができる」と、平和をかみしめている。(バンダアチェ 共同)

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