海外情勢

タイ、乱射事件で強まる軍批判 サイドビジネスが引き金に

 タイで2月8日に起きた乱射事件をめぐり、軍への批判が高まっている。射殺された容疑者の陸軍兵士の男(31)は、基地から銃器を強奪し犯行に使用。さらに軍特有のサイドビジネスで上官とトラブルになり、事件の引き金になったとみられているためだ。競馬場やボクシング場まで所有する特権にも非難が集中し、軍が組織改革を約束する事態になった。

 容疑者は東北部ナコンラチャシマの商業施設に立てこもり無差別に発砲し、市民ら29人が死亡、58人が負傷した。タイでは前例のない凶悪事件だった。

 事実上の軍トップ、アピラット陸軍司令官は11日の記者会見で、涙ながらに謝罪した。ただ「軍を責めないでほしい。軍は神聖な組織だ」「(容疑者は)発砲した瞬間から兵士ではなくなった」などと弁明。野党議員らから「基地の警備に欠陥があったのは明らか」と批判が噴出した。

 タイで軍の影響力は強大で、プラユット首相は元陸軍司令官だ。軍は広大な土地のほか、競馬場やゴルフ場、ホテルも所有し、不動産事業で利益を得ている。容疑者は軍の土地の売買をめぐり、上官ともめていた。軍の福利厚生事業として一般的なもので、売買を許可する権限は上官が握る仕組みだという。

 批判を受け、軍は組織改革を進めると表明。不動産事業の管理を財務省に移譲し、上官への不満を司令官に直接報告できる制度をつくると決めた。ただ会員制交流サイト(SNS)では、改革の実効性を疑問視する意見が多く、アピラット氏の辞任を求める署名運動が展開されている。(バンコク 共同)

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