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1~3月期マイナス成長必至 景気後退局面入りか、新型コロナ直撃

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、日本経済が景気後退局面に入ったとの見方が強まっている。内閣府が9日発表した2019年10~12月期の実質国内総生産(GDP)は年率換算で7.1%減となり、2月17日発表の速報値(年率6.3%減)から大幅に下方修正した。民間シンクタンク各社が9日発表した20年1~3月期の実質GDP成長率の予測値は、昨年10~12月期に続きマイナスに落ち込むとの見方が大勢だ。“コロナショック”が日本経済を根底から揺るがしている。

 ◆10~12月期下方修正

 10~12月期のGDP改定値は 民間シンクタンクの事前予測(10社平均で前期比年率6.8%減)を下回り、マイナス幅は前回の消費税増税後の14年4~6月期(7.4%減)以来、5年半ぶりの水準となる。企業の設備投資が四半期換算の前期比で4.6%減と、速報値(3.7%減)から大きく引き下げられたことが主な要因だ。設備投資の落ち込み幅はリーマン・ショック直後の09年1~3月期(6.0%減)以来の大きさだ。

 一方、民間シンクタンクの1~3月期実質GDP成長率予測は前期比年率0.8%~5.0%減。新型コロナの感染拡大でイベントや旅行、外食などの自粛が広がり、GDPの6割を占める個人消費が大きく押し下げられるため、マイナス成長予測が相次いだ。4.0%減を予測した三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は「消費税増税と新型コロナは一過性の下振れ要因だが、連続で発生すれば一時的な現象では済まされない。景気は既に後退局面入りしている」と指摘する。

 欧米では一般的にマイナス成長が2四半期続けば景気後退と判定される。日本では内閣府が経済の専門家を集めた景気動向指数研究会の検証を経て決める仕組みだが、2四半期連続のマイナス成長となれば、国際的には「テクニカル・リセッション(技術的な景気後退)」となる。実際に景気後退となれば、欧州債務危機の影響を受けた12年4~11月以来となる。

 内閣府は10~12月期のGDP改定値発表と合わせ、7~9月期の実質成長率も前期比年率0.5%から0.1%に下方修正した。10月の消費税増税直前に国内経済はほぼゼロ成長まで減退していたことになる。いわゆる“老後2000万円問題”など高齢化に伴う老後の生活不安で景気が弱まっていたところに、消費税増税による購買意欲の減退が重なった。また、米中摩擦による中国など海外経済の減速が経済を下支えしてきた企業の設備投資まで追い打ちをかけ10~12月期のマイナス幅が拡大した。

 ◆政府の認識と乖離

 政府は消費税増税の悪影響が短期間で反転し、堅調な内需のもと、穏やかな景気回復が続いていると主張する。だが、内閣府発表の1月の景気動向指数は6カ月連続で基調判断が景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」に据え置かれた。政府の景気認識と経済指標の乖離(かいり)は広がる一方だ。

 西村康稔経済再生担当相は9日、参院予算委員会で10~12月期のGDP改定値の下方修正が「1次速報時点の想像を超えたものだ」と指摘した。政府は増税後の景気の弱さを率直に認め、適切な経済対策で景気の持ち直しを図る必要がある。(田辺裕晶、林修太郎)

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