海外情勢

「中国依存」止まらなかった関西経済 リスク回避も推し進めたが…

 新型コロナウイルスの感染拡大が、関西経済を支える観光、製造業に甚大な影響を及ぼしている。関西を訪れるインバウンド(訪日外国人客)が急減し、中国国内の生産拠点や物流網の封鎖で、企業のサプライチェーンが混乱に陥っている。関西経済が中国に深く依存している現状も、事態の悪化に拍車をかける。(黒川信雄)

 影響額3042億円

 「外国人の流れが激減している。インバウンド向けビジネスはどこも壊滅状態だ」

 訪日客がまばらな大阪・ミナミの戎橋筋商店街の軽食店店主は肩を落とした。新型ウイルスの感染拡大を阻止するため中国政府は1月27日、海外への団体旅行を禁止。日本政府も中国客の入国を制限したことで、日本を訪れる中国人客は激減した。

 インバウンドに人気の関西。なかでも中国客の減少は大きな影響を与える。日本政府観光局によると、2018年に日本を訪れたインバウンドの総数は3119万人で、そのうち中国・香港からの訪日客は約3割の1058万人。一方、大阪ではインバウンド約1141万人に対し中国人客は526万人と46%を占め、中国人客の割合が高い。

 りそな総合研究所は3月11日、関西での宿泊や飲食、物販など関連市場への影響額が3042億円に上るとする試算を発表した。2月13日時点での試算は1905億円だったが、感染の長期化で1・6倍に膨んだことになる。

 中国が輸出相手トップ

 製造業でも影響が深刻化している。大阪商工会議所が2月に会員企業を対象に実施した緊急調査では、「当局の指示で浙江省の工場が完全にストップしている。従業員も自宅待機させている」(工業用ゴム製品製造)「江蘇省にある委託工場が再開できない。道路が封鎖され、従業員の身動きが取れないためだ」(建築用金属製品製造)など、厳しい現状が報告された。

 今回の問題で「マイナス影響を受けている・今後生じる可能性がある」と回答した企業のなかで、最も多かった回答が「中国からの部品、原材料、商品などの調達・輸入に支障」(42・6%)で、「中国の物流網の停滞」(31・6%)「中国での生産に支障」(23・2%)と続いた。

 この背景には、製造業でも関西が中国との結びつきが強いことがある。関西では輸出相手国として03年以降、中国がトップの座を占め、北米が首位の関東や中部との違いが際立つ。輸出入総額に占める中国の割合は、全国平均を約7ポイントも上回っている。

 シンクタンクのアジア太平洋研究所(APIR、大阪市)の稲田義久研究統括は「関西の輸出産業が中国のサプライチェーンに深く取り込まれていることが背景にある」と指摘する。

 APIRによると、18年の関西の輸出品目のトップは「半導体等電子部品」だが、中部は「自動車」、関東は「半導体等製造装置」だった。付加価値の高い最終製品を北米などに多く輸出する中部や関東と違い、関西は家電や機械の「部品」を多く中国に輸出していることを示している。

 経済成長率0%も

 かつて日本の製造業では、中国への一極集中によるリスクを避けようと「チャイナプラスワン」と呼ばれる施策を推し進めた。中国の代替生産拠点をつくろうという試みだが、関西経済同友会の池田博之代表幹事(りそな銀行副会長)は「(チャイナプラスワンの)実現は難しかった。中国依存度を抑える方策があるかというと、なかなか難しい」と語る。

 関西の主力産業の電機業界などは、海外生産拠点として中国への進出を活発化してきた。松下幸之助氏の決断で日本の製造業による中国進出第1号となった松下電器産業(現パナソニック)など、歴史的にも中国との関係が深い。

 関連産業の中国ビジネスも拡大。現在のような「中国依存」の産業構造になったのは「ごく自然な流れ」(APIRの稲田氏)との見方もある。

 APIRは感染拡大で観光、製造業への影響が長引けば、関西の20年度の経済成長率は0%に陥ると予想する。中国への一極集中のリスクが改めて鮮明になるなか、事態の改善に向けた取り組みが進むか注目される。

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