国内

2月求人は大幅悪化も あす雇用統計、採用意欲後退

 新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、今月31日に発表される有効求人倍率など2月の雇用統計が注目されている。国内外の人の移動の制限やイベントの自粛などで観光や宿泊、飲食業を中心に求人が大幅に減少する可能性があるためだ。雇用問題に詳しいエコノミストからは「有効求人倍率の2月以降の大幅な悪化は避けられない」との見方が出ている。

 厚生労働省は29日、新型コロナウイルスによる業績悪化などで、解雇されたり雇い止めされたりする見込みの人が、27日時点で994人に上ると明らかにした。各地の労働局を通じて集計した。企業が従業員を休業させた場合に支給する「雇用調整助成金」に関連する相談は同日時点で3489事業所から寄せられている。学生らの内定の取り消しは28日時点で22件32人という。

 雇用の現場では観光や宿泊、飲食業を中心に労働時間の短縮や休業の動きが出ており、企業の採用意欲は大幅に後退している。赤羽一嘉国土交通相は24日、宿泊業の3、4月の予約が施設によって前年同月比30~90%減るとの見込みを明らかにした。日本旅館協会(東京)の担当者は「元々は人手不足だったが、新型コロナで一変した。仕事がないため従業員を休ませる旅館が増えている。このままでは経営破綻する旅館も出かねない」と指摘する。

 厚労省が2月末に公表した1月の有効求人倍率は前月比0.08ポイント低下の1.49倍。新型コロナの影響は出ていない時期の統計だが、米中貿易摩擦の影響で製造業の求人が減った。依然として高い水準を保つが、景気は後退局面に入ったとの見方を背景に、求人倍率も既にピークを過ぎたとの認識が広まっている。

 リーマン・ショック後の2009年夏には有効求人倍率は0.42倍、完全失業率も5.5%まで悪化した。安倍晋三首相はその後の改善(20年1月は2.4%)をアベノミクスの成果と強調してきたが、雇用環境の悪化は避けられない見通しだ。日本総合研究所の山田久主席研究員は「国際的な人の移動の制限など経済活動がすぐに元通りになる可能性は低く、雇用環境は一度落ち込めば再び上向くには時間がかかる」との見方を示した。

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