新たな食料・農業・農村基本計画は、国内農業の生産基盤の強化を図る姿勢を訴えたほか、農林水産物・食品の輸出額目標を初めて盛り込んだ。ただ、農地面積や農業就業者数はさまざまな取り組みの効果を織り込んでも減少が続く。新型コロナウイルスの感染拡大が新たな脅威として浮上する中、逆境を乗り越える政策遂行力が問われる。
新たな基本計画には、主に与党の指摘を踏まえて新型コロナに関する記述が加わった。新型コロナにより「わが国の農林水産業・食品産業は深刻な需要減少や人手不足などの課題に直面している」と指摘。その上で「内需・外需の喚起と生産基盤の安定化に向けた対策を十分に講ずるとともに中長期的な課題などを整理する必要がある」とした。
食料自給率の目標は、カロリーベースで2030年度に45%とした。ただ、直近の18年度は、コメが大不作となった1993年度と並ぶ過去最低の37%。自給率や熱量効率の高いコメの消費減少などを背景に低下傾向にあり、達成は容易ではない。
2030年までに5兆円とした輸出額目標も、実現性を疑う声は与党からも上がる。政府は、新設する司令塔組織「農林水産物・食品輸出本部」を軸に本腰を入れるが、新型コロナで世界景気に急ブレーキがかかる中で当面は輸出を増やしにくい。輸出促進が国内農家の所得向上にどう貢献するのかなどの課題も残る。
生産基盤は弱体化に直面している。農地面積は、荒廃農地の発生を防ぎ再生に努める効果を踏まえても30年に414万ヘクタールと、19年の439万7000ヘクタールを小幅に下回る見通し。また農業就業者数も、青年層の新規就農を促すなどしても30年に140万人と、15年の208万人から3割強減る。
農水省の有識者会議では「政策遂行力の向上が大事だ」との指摘も出た。農政を担う国や自治体の取り組み強化が求められそうだ。(森田晶宏)