日本銀行が1日公表した3月の企業短期経済観測調査(短観)は、大企業製造業の最近の景況感を示す業況判断指数(DI)が昨年12月の前回調査から8ポイント下落のマイナス8となった。悪化は5四半期連続で、マイナス転落は2013年3月調査以来となる。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う人やモノの移動制限、国内外の需要の落ち込みが日本企業を直撃した。
前回調査からの変化では、非製造業が12ポイント下落となり、新型コロナの影響がより深刻に表れた。このうち宿泊・飲食サービスは70ポイント下落し、マイナス59となった。遊園地やスキー場を含む対個人サービスは31ポイント下落のマイナス6で、いずれも調査項目に入って以来、最大の悪化幅を記録した。訪日外国人客の減少を懸念する声が目立った。
3カ月後の景況感を示すDIは大企業製造業で3ポイント下落のマイナス11。中小企業はさらに厳しく、製造業は14ポイント下落のマイナス29、非製造業は18ポイント悪化のマイナス19だった。日銀の担当者は「新型コロナによる先行き不透明感を懸念する声は幅広く聞かれた」と話している。
ただ、7割程度の企業は東京五輪・パラリンピックの延期が決まる前の3月11日までに回答しており、現在の景況感はさらに悪化している可能性がある。
20年度の設備投資計画については、全規模全産業で前年度比0.4%減を見込む。ほぼ前年度並みの計画だが、日銀では「6月短観では減少する可能性もある」(担当者)とみている。
企業が事業計画の前提に置く想定為替レートについては、20年度は1ドル=107円98銭。
DIは業況が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を差し引いた数値。調査は2月25日~3月末に実施し、約1万社が協力した。
先行きさらに悪化の可能性
みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストの話 大企業製造業の景況感は幅広い業種で大幅に悪化したが、新型コロナウイルス感染拡大の影響が完全に反映されたわけではない。日本では経済活動への影響が3月後半から出始めたため、悪化の度合いはまだ途中段階にあり、先行きはさらに悪くなり得る。非製造業の宿泊・飲食サービスの業況判断指数(DI)は過去最低のマイナス59に落ち込んだが、訪日外国人客の減少や外出の自粛要請という悪い材料がそろったためだ。