高論卓説

改めて玄米備蓄のすすめ 危機に備え、緊急経済対策で増進を (1/2ページ)

 2015年6月にこのコラムで「玄米備蓄のすすめ」という記事を書かせていただいた。その趣旨は、突然の火山噴火などの天災により穀物が全球的に数年連続して不作になる可能性があり、それに備えて2、3年分の食糧備蓄が必要なこと、保全性に優れた真空パック玄米がそれに最適であることだった。(戎崎俊一)

 あれから5年たち、不幸にしてこの件を思い出す必要が出てきた。新型コロナウイルスの感染爆発により、世界が大混乱に陥っている。このウイルスは直接には食物の生育に影響を与えないだろうが、安心は禁物である。医療崩壊が進んで社会が混乱し、農業に手が回らない状況になれば、世界全体の食糧生産が減少する可能性がある。

 また、世界の経済システムが機能不全となれば、せっかく生産された食糧の輸入も滞るかもしれない。カロリーベースの食料自給率が37%(18年度)の日本とすれば憂慮すべき事態である。今年の夏ごろから食糧輸入に支障が出た場合、国内の備蓄が底をついて食糧不足が表面化するのは早くて21年の春先ごろである。混乱が長引いて21年まで食糧輸入に支障が残る場合には、22年の春あたりに深刻な状態を迎える。幸いにしてまだ時間がある。今のうちに生産者、消費者、政府が協力しつつそれぞれ努力して、併せて数年分の食糧備蓄に心がけるべきだと思う。

 まず、家庭で1年分ぐらい備蓄しよう。玄米真空パックであれば、特別な設備はいらない。わが家の寝室には10年に大量に購入したものが積み上がっており、全く問題なくいただいている。食糧不足になったときに、一番困るのはわれわれ消費者だ。大事な家族の命を守るため、行動を起こそう。スペース的に困難な場合は、生産者か卸売り・小売業者に保管を依頼する「貯米」(銀行にお金を預金するように米を預ける)の仕組みを考えてはどうだろう。

 次に、生産者も少なくとも1年分ぐらいの在庫を持っておいてほしい。人間は、1カ月食べなければ確実に死ぬ。「食糧安全保障の観点から日本の農業を守れ」というなら、1年分の在庫を常に確保し、安定供給のため万全を期す体制を取ってほしい。

 最後に国家も1年程度の備蓄を持つべきだと思う。そもそも国の原初的な機能は、危難に備えて食糧・その他を備蓄し、それを守るための警察力を持つことだった。政府はその原点を忘れないでほしい。

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