デジタル経営革命新時代

(2-2)今こそ若い世代に大胆な投資を

 新たなビジネスモデル発信

 安田「私たちの事業を通じて実感するのは、DXを推進するうえで、人材育成や組織の課題にフォーカスする企業がものすごく増えているということです。例えば、ある企業は、グループ従業員約1万人のうち6割の6000人をAIなど先端テクノロジーを扱える人材に育成しようとしています。また、ITエンジニアだけでなく、現場の工場作業員の方などにデジタル技術の習得を促す企業も増えてきています。なぜならこれが、DXプロジェクトの成功確率に大きく影響するためです。例えば、私がAIエンジニアで宮本酒造店をDXしようとしても、AI専門の私は酒造りの業務工程がどうなっていて、どこをどう効率化すべきかを知りません。いまは、このようなAIエンジニアと現場とのミスマッチが問題になっているのです。これを解決するには現場からの歩み寄りが必要で、自社の業務フローの中で何ができるのか、自社のデータを活用してどのような付加価値を生み出せるのかといったことを自分たちで考えなければなりません。エンジニアだけでなく、現場の方、さらにはそれを支える経営者が、一丸となってデータとデジタル技術の活用を考えることが重要です」

 宮本「まさに、経営者自らが自社の、あるいは業界のITシステムの現状を適時適切かつ冷静に捉え、この時代に合ったビジネスモデルとしてどうあるべきかを発信していかなければならないと思います。政府としても、デジタルガバナンス・コード(指針)の策定や認定制度の創設など、経営者自らが決断して、DXに取り組む企業を後押しするだけの政策を用意していきますし、既に予算化しているものもあります。人材育成に関しても、独創的なアイデアや技術を持つ突出した人材を発掘・育成する『未踏事業』、企業の中でのいろんな課題をAI人材とマッチングすることで解決していく『AI Quest』、そして経済産業大臣認定の『第四次産業革命スキル習得講座認定制度』があります。これは今後の成長が見込まれるIT・データ分野で専門性を身につけてもらうための教育訓練講座で、eラーニング講座も認定対象です。一方、学校教育においても、小・中・高校の生徒1人にタブレット端末1台を配布できるように予算を投入。EdTeck(エドテック)による次世代の人材教育を目指して、今後はここにさまざまなプログラムを投入していきます。ハードを完備したら次はソフトだということで、文部科学省をはじめ他省庁と連携して中長期的に取り組んでいきます。日本のこれまでの教育は偏差値重視の詰め込み型が主流だったために、幼少期から自由な自己実現の機会というものが限られていたのではないかと感じています。これからは独創的な人材を育てるためにも、音楽であれ美術であれ、どんな分野でもいいから興味を持ったりワクワクしたりして自己実現できるような機会を増やしていくべきだと思います」

 デジタル化支援で予算確保

 安田「間違いありません。加えて、企業のデジタル変革を進めるために、政府に期待したいことが3点あります。1つはデータやデジタル技術を活用しやすくするための規制緩和です。国や自治体から案件を請けている企業の方々とお話をして感じるのは、国や自治体が指定する業務要件がデジタル技術の活用にマッチしていないということです。最近も建設会社の方から、導入すれば大きなコスト削減につながることは分かっているが、規制に阻まれて投資ができないという声を聞きました。2つ目は、企業の教育投資をもっと後押ししていただきたいということです。現在、新型コロナウイルスの影響でリモートワークが推進されており、デジタル技術をうまく活用しなければ収益を上げることもおぼつかなくなりました。そのため、デジタル人材育成はもはやコストセンターではなくてプロフィットセンターだといえます。3つ目は、若いデジタル人材を輩出するための投資を促していただきたいということです。私は24歳ですが、周りには18、19歳の優秀な人材がどんどん出てきていて、私でも年をとったなと感じるほどです。彼らは好きなことや得意なことに全力で打ち込んでおり、環境さえ与えられれば、若くて柔軟な吸収力を発揮して驚異的な成果を上げます。明治維新の頃は坂本竜馬ら20代の若者が活躍しました。米国でも、アップル創業者のスティーブ・ジョブズ、フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグら、最先端企業の経営者はみんな20代の頃から活躍しています。日本は、今こそ国を挙げてこの世代に大きく投資をすべきだと思います」

 宮本「日本は今、人口減少のフェーズに入っていて、生産年齢人口が減っていきますので、企業はデジタル化も含めて、省力化、効率化を図っていかなければいけないという時代背景があります。そのため、経産省の施策としては、新型コロナ対策としてのテレワークを実現するためにも役立つ『IT導入補助金』や、中小企業の生産性を高めるための『ものづくり補助金』、小さな企業でも強みを発揮するための挑戦ができるようにする『小規模事業者持続化補助金』があります。この三本柱の事業を複数年にわたり切れ目なく応援できるように予算を確保いたしました。生まれたときからデジタルに包まれて育ったデジタルネーティブの世代が今、安田社長のように社会に出てそれぞれの思いを形にようとチャレンジされていると理解していますし、Society5.0の柱となって活躍していただくのもそうした世代だと期待しています」

 新旧世代の相互理解を推進

 安田「例えば、Society5.0で提唱されるスマートシティの議論では、10年や20年、あるいは30年先の社会について考えます。ここでは、そもそも、私たちの住む街や国をどのようなものに変えたいのかという根本の問いに答えを出さなければなりません。そのためには、その時代に社会の主役となる現在の若い世代をいまから参画させることが必要です」

 宮本「幼少期から自己実現できる機会を増やすことによって、今の社会ルールに押しつぶされずに自分の思いや考えを言葉に置き換えられる若者が増えていきます。われわれのようにアナログで育った人たちはそれをしっかりと受け入れる度量を兼ね備えていかなければいけない。新旧世代の相互理解が進めば、いろんなところで自然発生的に良い化学反応が起こってくると思うので、お互いにワンチームとなってやっていきましょう」

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