国内

専門家が見る 緊急事態宣言のタイミングの是非

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、7日に出された緊急事態宣言。3月中旬に出たイタリアなどに比べると、半月以上遅れての発令となった。政府は「医療現場で危機的な状況となっていることを踏まえた」と説明しているが、専門家はこのタイミングをどう見るのか。(有年由貴子、入沢亮輔、江森梓)

 「少なくとも1カ月ほど前に出してもよかったのでは」

 こう話すのは、宮本勝浩関西大名誉教授(理論経済学)。発令によって国民のさらなる出控えが予想され、経済的損失は数十兆円にも上ると試算する。感染が拡大すればするほど損失は広がり、経済回復までの時間がかかる。「宣言が出されれば、抜本的な感染拡大防止の対策を講じられ、今よりも感染拡大は食い止められていたはずだ。感染者の少ない早い時期に出していた方が損失は少なかっただろう」と指摘する。

 東京女子大の橋元良明教授(情報社会心理学)は「緊急事態」という言葉が国民に対して強いメッセージ性を持ち、一人一人の行動に大きく影響する、とみる。感染拡大を受けて、これまでも東京や大阪では外出自粛要請が出されており、人出は大きく減ることが予想される。「日本人は同調思考が強いとされ、これまで自粛の行動をとっていなかった人にも一定の効果があるだろう。外出自粛の流れはさらに強まる」と分析する。

 そのうえで、国民の間で緊急事態宣言の発令が現実味を帯びてきたのは、安倍晋三首相らがロックダウン(都市封鎖)について言及し始めた3月下旬ごろとし、「国民の間ではもう覚悟ができていた。そうした意味では、発令はもう少し早くても良かったのではないか」と話す。

 一方で、肯定的にとらえるのは、広島大の坂口剛正教授(ウイルス学)だ。「新型コロナは当初の見立てより重症化の率が高く、決してあなどれないウイルスだということが分かってきた。ここで宣言を打ち出すのは、気を引き締める意味があるのではないか」と指摘する。

 医療現場では今、医療崩壊に対して緊張が高まっているとし、「宣言を受けて、みんなが外出自粛などを守れば感染拡大を穏やかにすることができる。その間に重症者と軽症者を分けるなど医療体制強化のための時間を稼ぐことができる」と述べた。

 近畿大の久(ひさ)隆浩教授(都市・まちづくり)は「こうした宣言は公権力の押し付けになりかねず、本来は宣言を出さなくても感染防止に向けて一人一人が自律した行動をとるのが望ましい」と指摘。3月の連休中に外出自粛要請が出ていたにもかかわらず勝手な行動をとっていた若者らもいたとし、「宣言を出さないとこうした行動を抑えきれない状況にある。やむをえないぎりぎりの判断だったのだろう」と話した。

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