海外情勢

「優等生」のはずのシンガポールで感染者急増 劣悪な住環境で拡大

 【シンガポール=森浩】新型コロナウイルス押さえ込みの「優等生」とされたシンガポールで、外国人労働者を中心に感染者が急増している。人口は約560万人だが、24日までの感染者は1万1178人で東南アジア最多。日本ともあまり変わらない。インドやバングラデシュからの労働者が住む寮での感染が8割以上を占め、密集した住環境が影響しているもようだ。経済成長を支えてきた外国人労働者の感染拡大に政府も苦慮している。

 「人と人との距離が十分に取れない劣悪な環境だった」。

 2003年から出稼ぎに来ているバングラデシュ出身のコカンさん(41)は、通信アプリでの取材に、自身が生活を送っていたシンガポール北部の寮についてこう振り返った。コカンさんも新型コロナに感染し、4月中旬から病院で治療を受けている。

 生活していたシンガポール北部の寮は12人が一部屋で生活しており、窓は小さく、天井には2つの扇風機がついているだけで、空気の通りも悪かったという。「洗面台、シャワー、トイレがある場所は1つ。100人以上が共有していた。きちんと掃除されていたとは言い難い」とコカンさんは話した。

 シンガポールは1980年代から外国人労働者を積極的に受け入れており、労働者全体の4割弱を外国人(永住権の非保持者)が占める。建設業や製造業などでは、「ワーク・パーミット(WP)所持者」と呼ばれる単純労働専門の外国人労働者なしでは成立しえない事業者も多い。今回、感染が拡大しているのはWP所持者が中心だ。

 シンガポールは水際対策の強化や他者との距離を保つことの徹底などで感染を押さえ込もうとしてきたが、「三密」(密集、密室、密接)がそろっている寮が盲点となった格好だ。リー・シェンロン首相は21日のテレビ演説で、外国人労働者が感染した場合、「シンガポール人と同様に治療する」とし、国としてケアしていくことを強調。合わせて、5月4日までの予定だった学校や大部分の職場の閉鎖を6月1日まで延長すると発表した。

 外国人労働者の居住施設での感染拡大は、中東カタールなど他国でも懸念が高まっており、人権団体が環境の改善を呼びかけている。

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