内閣府は24日、新型コロナウイルスに関する緊急経済対策で物価変動の影響を除く実質の国内総生産(GDP)が4・4%程度押し上げられるとの試算を公表した。全国民への一律10万円給付が追加され、令和2年度補正予算案が組み替えられたことを反映し、従来見込んでいた最大3・8%を0・6ポイント上方修正した。ただ、現金給付が消費に回る割合を過去の事例より大きく見積もるなど、大げさな試算だとの見方もある。課題をQ&Aでまとめた。
Q どう算出したのか
A 事業規模117兆1千億円の緊急経済対策のうち、直接需要を生み出さない納税猶予などを除いて効果を積み上げた。自然災害からの復興などを目的に昨年12月に決定した「総合経済対策」の未執行分が1・1%、10万円給付や感染収束後の消費喚起キャンペーンなど、新たに盛り込まれた施策の効果が3・3%と見積もっている。
Q 本当に4・4%も押し上げ効果があるのか
A 民間シンクタンクでは経済効果は1%台との見方があり、隔たりは大きい。争点の一つは総額12・8兆円の10万円給付がどれだけ消費につながるかだ。試算では一般の労働者は給付額の67%、年金生活者など非労働者は30%が消費につながると仮定している。
Q なぜ消費に回る割合が分かるのか
A 一般の労働者では通常の収入が消費に回る割合と同程度とみた。非労働者ではリーマン・ショック後の平成21年に実施された定額給付金を参考にした。
Q 何が問題なのか
A 10万円給付のような臨時収入から消費に回る割合は、一般的に通常の収入の場合より低い。また内閣府は24年4月の報告書で、定額給付金の際は「25%」にとどまったと指摘していた。ただ、今回は自粛要請で減収に見舞われて生活費に困る人が増えているとの見立てで高めに設定したようだ。
Q お金を使いたくても買い物に行けない
A 外出自粛が続くうちは本格的な消費喚起は難しい。政府も10万円給付は国民に迷惑をかけた“慰労金”との位置づけだ。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは消費者心理が改善されないと給付金は貯蓄に回ると懸念する。