日銀が新型コロナウイルスの感染拡大を受けて追加的な金融緩和策を決めた。金融市場の動揺に備えて国債購入の上限を撤廃し、企業の資金繰り支援も強化した。
3月の緩和策に続く措置である。経済活動の自粛などで景気悪化は日増しに深刻化しており、感染収束も見通せない。長期戦を念頭に置いて万全の対策を講じるべきだ。
無論、日銀の政策だけで今の事態は乗り切れまい。政府の補正予算案は30日成立の運びだ。その対策と合わせて、重層的に経済を下支えしなければならない。
年80兆円がめどだった国債の買い入れ上限を撤廃したのは、国債増発による政府の財政出動で金利が上昇する懸念があるためだ。政府が追加歳出を重ねれば、国債はさらに増発されよう。日銀の措置はこれに備えるものだ。
国の借金を日銀が無制限に賄える手法は財政ファイナンスの色彩が濃く、本来、あるべき姿ではない。それでも積極的な姿勢を示さなくてはならないほど景気の先行きは深刻だとみるべきである。
企業の資金調達の後押しも急務である。そのために日銀は、社債やコマーシャルペーパー(CP)の購入枠を大幅に増やした。貸し出しを増やすよう金融機関への資金供給を拡充したのも当然だ。
緊急事態宣言後、外出自粛や休業で多くの企業活動が一段と縮小した。中小・零細事業者はもちろん、手元資金が潤沢な大企業も経営悪化に陥りかねない状況だ。
政府には政府系金融機関を通じた実質無利子・無担保の融資制度があるが、申し込みが殺到し、迅速に対応しにくい。経済対策には中小企業に最大200万円を支給する制度もあるが、要件や金額が不十分との声もある。こうした不満をいかに解消できるかだ。
日銀が社債購入などを増やせば倒産で損失を被るリスクも増えるが、まずは企業を全力で支えて、雇用を守ることを優先すべきだ。同時に民間金融機関は、大型連休中も企業の融資相談に応じるなど政府・日銀と連携して迅速な企業支援に努めてほしい。
日銀は今年度の経済成長率見通しを大幅なマイナスへと下方修正し、物価上昇率の見通しも引き下げた。感染収束後も経済の低迷が続けば、再びデフレに舞い戻ることもあり得よう。その危機感を共有しなければならない。