「諸事情で閉鎖します」
Tさんの奥さんは日常会話の日本語はできるものの、わざわざVPNを使ってまで日本の報道へ接することはなく、当たり前のように中国の報道から情報を得ていたので、「日本は危ない。どうしてこのタイミングで中国よりも危険な日本へ行くのか」と大喧嘩になったという。
在住日本人のネットワークで流れる情報でも、日本の対応は甘く、強力なロックダウンを続ける中国のほうが安全だと考える人も少なくなった。
「今まで経験したことない1カ月以上の外出禁止。外食も通勤も厳しく制限された外部との遮断された環境で過ごしていたので、先々の不安と焦りでメンタルヘルス障害になっていました」(同)
Tさんがそれでも3月8日の帰国を決めたのは、ある情報がきっかけだった。それは、2月下旬、同じ都市に住む日本人ユーチューバーの動画で、中国の医者らの「WeChat(中国版『LINE』)」グループ上の会話内容が外部へ漏洩していることを軽く伝える内容で、それはある医療関係者たちのやり取りだった。
その動画を公開した数日後、その日本人ユーチューバーのチャンネルは、「諸事情で閉鎖します」と終了した。本人の口で短く閉鎖理由を述べていたが、言わされた感があり、違和感がある終わり方だったという(現在は非公開)。
Tさんは不自然な終わり方をした日本人ユーチューバーのチャンネル閉鎖を見て、中国政府への底知れぬ恐怖を改めて感じ、なんとしても帰国したいと、航空券確保と引越し準備を進めたという。
日本のほうがまだ安心できる
Tさん一家は、自主隔離を終えて外出するようになったが、Tさんの奥さんは、日本は静かでみんな冷静だと感想を口にしている。
しかし、時折通る救急車のサイレンを聞くとビクっとなるそうだ。中国で外出禁止中に頻繁に救急車が走り回っていたことで、未知なる感染症への不安を重ねてきたからだ。
日本は、7都府県から日本全国へ緊急事態宣言が拡大するなど感染収束がまったく見えない状況ではあるものの、日本のほうが色々な角度の情報があるからまだ安心できるとTさんは話す。(筑前サンミゲル/5時から作家塾(R))