中国を読む

「コロナ後」へ製造業変革の兆し 海外依存への危機感 (1/2ページ)

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、中国の社会・経済・生活など各方面に大きな影響を及ぼしている。中国製造業では1月下旬の春節(旧正月)による操業停止から、人的移動制限やサプライチェーンの供給制約などの影響を受け、生産再開できない企業が続出した。4月中旬では、大企業の99%、中小企業の84%が生産再開できているとはいうものの、これまでのさまざまな感染拡大防止措置は完全緩和されるに至っていない中で、生産回復・維持に苦労している企業は少なくない。

 自動・遠隔・省人化へ

 中国製造業において、直近の課題は生産回復であるが、同時に中長期的な変革の兆しも見え始めている。例えば、自動化・スマート化・省人化の加速、遠隔モニタリングの応用、サプライチェーンの見直しや企業間連携の強化、研究強化に対する意識の高まりなどである。3月に機械工業情報研究院などが行った調査では、「新型コロナを乗り越えるための今後の取り組み」として「生産プロセスの自動化」「新規サプライヤーの開拓」と回答した企業が全体の約4割、また「技術研究開発の強化」との回答が約5割に達している。

 これら一つ一つは、新型コロナ以前からその必要性が取り上げられていたものであり、決して目新しいものではない。例えば、自動化・スマート化の推進は、生産人口減少、労働者の流動性の高さ、人件費の上昇、手作業による品質のばらつきなどさまざまな課題に関連し、長年その必要性が叫ばれてきた。これまで資金力・技術力のある大企業などでは取り組みが進んできた一方、多くの企業ではその必要性は理解しつつも、設備投資負担を考えるとなかなか踏み切れないでいた。

 今回の新型コロナを通じて、労働力確保、従業員健康管理、特定人材へのスキル依存などのリスクが顕在化したことは、多くの企業が自動化・スマート化・省人化に対する決意を新たにする契機になっていると考えられる。

 中国政府もまた、新型コロナの影響を乗り越える過程において、中国製造業のレベルアップを加速させたいとの意図も見て取れる。3月20日の人民日報1面に、スマート化が新型コロナ後の生産再開に大きく寄与したことを伝える記事が掲載された。大手銅製品加工メーカーの金田銅業は、早くからスマート化・自動化に取り組んできたことが功を奏し、2月10日には従業員は少ないながらも生産・出荷を再開し、3月にはフル生産状態まで回復しているという。このように、自動化・スマート化が進んだ工場の早期生産再開が成功事例として取り上げられていることも、自動化・スマート化加速の機運を高めることにつながっていく可能性は大いに考えられる。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus