新型コロナウイルスの感染が広がるアフリカで、外出制限を課すかどうかで各国が対応に苦慮している。制限を課せば、失業など貧困層が打撃を受けるためだ。南アフリカは外出を制限しつつ巨額の経済支援を打ち出した。ガーナは早々に制限を解除。ケニアは「仕事がないと飢え死にする」との住民の声を背景に、全面制限に二の足を踏んでいる。
食料配給所に殺到し、食べ物を奪い合う群衆-。南アのメディアが報じた配給時の様子だ。政府は3月末からスーパーでの買い物などを除き、外出を禁止。軍も動員し違反者を取り締まった。その日暮らしの人たちは仕事にありつけず、食事すらままならない。
「収入が途絶え本当につらい」。妻と3人の子供と暮らすタクシー運転手、ポール・マカティニさんが嘆いた。仕事はなくなったという。
南アの経済格差は世界最悪レベルで、20%台後半の失業率は外出制限でさらに悪化。ラマポーザ大統領は4月21日、国民の不安を和らげようと「経済活動の制限を段階的に解除する」と表明。国内総生産(GDP)の1割程度に当たる約5000億ランド(約2兆8900億円)の支援も約束した。
「移動制限は貧しい人々に多大な辛苦をもたらした」。ガーナでは同19日、アクフォアド大統領が制限解除を発表。今後は濃厚接触者の追跡や隔離施設の拡充で感染を防いでいくという。
アフリカ54カ国では2万5000人以上が感染し、死者は1200人を超えたが、全面的な外出制限の実施を見送る国は多い。その一つがケニアだ。
首都ナイロビではスラムに住民が密集し、感染が急拡大する恐れがある。しかし外出を制限すれば貧困層の不満が政府に向かいかねず、対策は夜間の外出と都市間移動の禁止にとどまっている。
ナイロビの建設現場で働くジョスファット・ボンバさんは「外出禁止で仕事ができなくなったら、私も妻子も家で飢え死にする。ウイルス感染よりも怖い」と語気を強めた。(共同)