中国政府が、国を挙げたハイテク発展戦略「中国製造2025」を新型コロナウイルスの世界的感染拡大の中でも継続し、新たな研究プロジェクトの選定作業を始めたことがこのほど分かった。中国は米国の抵抗を受け対外的には同戦略への言及を避け続けているが、国力の源となるハイテク能力を向上させ「コロナ後」の世界の技術覇権を狙う姿勢が明確になった。
トランプ米政権は、同戦略を補助金などによる行き過ぎた国内産業保護の象徴と見なして警戒。感染拡大で米経済が停滞する中で進む中国の動きに反発しそうだ。米中は今年1月に貿易協議の「第1段階」合意に署名したが、ハイテク戦略が第2段階の協議で焦点になるのは必至だ。
中国政府が関連部門に出した通知によると、国内の研究機関や企業を対象に、4月20日から最先端技術の新規研究案件を募り始めた。中国製造2025に基づく募集だと明示している。審査を経て選定した事業に国が資金援助する。
通知は具体的な研究課題を列挙。ビッグデータや第5世代(5G)移動通信システムを活用して工場生産の効率化を図る手法の研究などに対し、2020年に計7億元(約105億4200万円)を支出し、一部は兵器生産に応用する。航空・宇宙、自動車、鉄道、原発で使う精密部品などの研究にも計5億元を拠出する。
ロボットの研究も進める。知識と任務、感情を融合した人型ロボットや、自主的に判断して集団行動するロボットの能力向上を目指す。
中国政府は15年に中国製造2025を発表し、18年までは毎年3月の全国人民代表大会(全人代=国会)で示す政府活動報告(施政方針)に同戦略を盛り込んできた。米中対立の激化を受けて19年は報告から取り下げ、習近平指導部は表向きは言及していない。
感染症の影響で5月22日開幕に延期した今年の全人代でも、米国を刺激しないよう明確に触れない可能性が高いが、戦略は着実に進める構えだ。(北京 共同)